きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

チェンジリング~妖精は禁断の実を冥王に捧げる~ / 沙野風結子(イラスト:奈良千春)

チェンジリング~妖精は禁断の実を冥王に捧げる~ / 沙野風結子(イラスト:奈良千春

[あらすじ]
「触れてはいけない。私を抱けば、あなたはまたつらい目にあってしまう」「お前の災いの予言ごと俺が背負ってやる」
妖精の取り替え子・ルカは「災いの預言者」と皆に疎まれていた。その力を妖精王に消してもらうため、唯一の友達・ゼインの手を借りるが、そのせいで彼は追放されてしまう。11年後、ルカは海賊となったゼインと再会する。彼に過酷な運命をもたらすことになる、ある使命を胸に。だが、ルカを恨むゼインにいたぶられるも、秘めていた恋情は募り、使命を果たす決心が揺らいでいく。そして、その時はきて!? 二人がひとつになるとき、妖精界、人間界の命運を呑み込む大きな海流が動き始める――。【特別版/書籍発売時、一部書店用に書き下ろされた番外編を追加収録!】
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[感想]
アイルランドの伝承である妖精と人間の取り替え子(チェンジリング)というテーマを上手く用いて、沙野風結子さんらしい世界観をこれでもかというほど展開していて面白かった。初見で読んだ時は少し乱雑な印象を持ったけれど、自分の中で整理しながら読み進めると、より確かな物語性を感じられる作品だった。
ことの発端となる子供の頃のエピソードの描き方がしっかりしているから、ゼインとルカが抱えて生きてきた心の慟哭が、11年後の二人の言動に見て取れてとても読み応えがある。ゼインのカリスマ性も、ルカの芯の強さと一途な想いも良かった。
二人の旅路はまだ途中......ということで、シリーズ化されるみたいですね。ゼインとルカのBL的な結びつきも気になるけれど、壮大な世界で闇に飲み込まれない強さを持った二人の躍動がとても楽しみ。


では、また!
浅葱 拝

10月に購入したBL漫画(全18冊)

こんばんは、浅葱です。

10月に購入した漫画はすべて新刊のみかな?
感想記事もっと小まめに上げたいって思っていたのに...10月は全然上げられてなかったわ......_(┐「ε:)_凹む。
まとめて振り返ることになってしまいましたが、よければおつき合いください❗️

ではどうぞー❗️
なおブログ内の作家名タグは感想ありの作家さんだけにつけています。
(順不同 / 敬称略 / あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)
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サラブレッドはなびかない / 佐倉リコ

[あらすじ]遊び人の獅子堂は優等生のサラブレッド・司馬に目の敵にされている。しかし以前は親友ともいえる存在だった。思春期を迎えた頃、司馬に対し獅子堂の支配欲が芽生えたのが原因で関係がこじれてしまったのだ。それ以来、親しくすることはなかったが、獅子堂の女性関係を説教してきた司馬を相手に欲望を発散することになり――!?
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[感想]
「オオカミくんはこわくない」のスピンオフ。幼馴染みのすれ違いで拗らせ両片想いの王道路線。司馬の獅子堂に対する態度は好き以外のなにものでもないし、お互い意識しまくりなのに、素直に接することができなくて拗れまくりの末に身体の関係を持ってしまう二人......素直になれよぉ〜ってジタバタ見守る感じの萌え。
最後に獅子堂がライオン姿になるところ好き。カバー下の子ライオン姿になるエピもかわいかった。幼馴染みものって幼少期の子供エピ読みたくなる性癖なの...ショタ好きってわけじゃないから自分でも謎の性癖ですがw
私はキャラ的にもストーリー的にも前作の「オオカミくんは〜」の方がきゅん萌多くて好きだった。...あの宇佐美の垂れ耳の可愛さに勝るのは難しい(個人的嗜好)。

いつか恋になるまで(全2巻) /  倉橋トモ

[あらすじ]兄弟同然に育ってきた千秋と和馬の関係に変化が起きたのは、中学3年のこと。
千秋を自室に泊めたその晩、うなされているような微かな声に和馬が目を覚ますと、布団の中で声を殺し、自慰に耽る千秋の姿が…。
和馬が触れると、千秋は戸惑いながらも自身を膨らませる。互いに握りあって、手の速度を早めれば、初めて見る幼なじみの表情がそこにはあって…。呼吸が整っても、千秋は和馬のほうを向けずにいた。それは、赤くなった顔を見られたくなかったから。そして、自分の気持ちに気づいてしまったからーー。『家族になろうよ』の千秋と和馬を描くスピンオフシリーズ、開幕!
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[感想]
家族になろうよ」の千秋と和馬の青春時代を描いた前日譚。
幼馴染みの二人が恋人になるまでの心の葛藤や悩みを描いていて、王道の幼馴染みBLという感じ。自分の想い×相手を想う気持ちに向き合いながら、日々を積み重ねていく幼馴染みものの題材を上手く描いていたし、それまでの自分たちから”卒業”していく希望を感じさせるエンディング部分も良かった。でも周りが物わかりの良すぎる人物ばかりだったので、少しご都合主義のような印象が残った。

心中するまで待っててね(上下巻) / 市梨きみ

[あらすじ]大好きだった近所のお兄ちゃんが、“成長しない”体で戻ってきた!?
お人よしで皆に愛される福太は、子供の頃の記憶が一部欠けている。それは憧れていた葵兄ちゃんの記憶。得体の知れない喪失感を抱えた福太の前に、葵兄ちゃんが昔と変わらない姿のまま現れて――!?失った記憶。それは思い出してはいけない過去。
連載時から賛否両論! ハートフル不穏BL、謎かけ編。コミックス描き下ろしは念願のほっこり食卓が実現――?
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[感想]
いざ感想を書くとなると文章にならないというか、気持ちがまとまらない。色々思うことがあって語りたいと思うのに、今のところ感想を書こうとチャレンジして何度か失敗しているので、もう少し時間をおいて、作品から距離をとってから、感想を書こうと思います。

彼と私 / 夏下冬

[あらすじ]【従順で無口な男、その正体は…】ごくごく普通のサラリーマンが、ある日「彼」を買った。彼はどうしてもという場合を除き、喋らない。男は彼を家に連れて帰り、着飾ったり、一緒にジョギングをしたり、時には身体を弄くり回す。何も話さず、ただ従うだけの青年は一体何者なのか。そして2人の関係とは…?※本作品は『Web BABY アラブ/魔法/契約特集』に収録されています。重複購入にお気をつけ下さい。
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[感想]
あぁ、そういうことなのかー!って最後の最後になるまでわからなかったので、オチがわかってからもう一回読み直したw
短編の良さを凝縮したミステリー仕立ての味わい......まだ読んでない人はネタバレなして読んで欲しい。ということで多くは語るまいw

革命のα / 鹿島こたる

[あらすじ]世はα全盛期。すべての富と権力はαの元に集中し、私利私欲のままにそれを貪る。媚びへつらうΩ・βの姿を見下ろして――…。そんな格差社会に一石を投じる考えの持ち主であるモーリスは、輝くブロンドに陶器のような白い肌。それはそれは美しく、賢く、気高い、名門セシェル家の御曹司α。側仕えの使用人β・シモンと良い仲だが、家督を継ぐ身であるが故、子を成すΩとの結婚は、避けて通れぬ道と定められていた。
性が、地位が、運命が、「愛」を翻弄する。絢爛耽美オメガバース
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[感想] 📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp

もっと甘えて!橘さん / 安滋かづ

[あらすじ]一目惚れしたサラリーマンの看病で座薬のお世話を…!?
薬剤師の宮野は、ある日道端で発熱して動けなくなっていた会社員の橘を拾った。具合が悪くても誰にも頼ろうとしない橘のことが放っておけず自宅での看病を買って出るが、高熱に浮かされて色気の増した橘の姿にあてられ座薬の世話までしてしまい…!?
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[感想] 積読中📚


キスしちゃダメなの? / 風呂前有

[あらすじ]赤毛にそばかすがコンプレックスな超純情ピュアピュア童貞DK・太郎は、自分と同じく『ハーフなのに英語が苦手』な転入生・瑠威に親近感を抱き、仲良くなる。だが瑠威からのスキンシップは、太郎が思う『友達同士』を越えるほど過剰で甘くて、毎日ドキドキさせられっぱなし――!友達って、キスしていいの……!? これって恋なの!? 何なの―――???バルで働く大人たちのスリリングな濃厚3Pスピンオフも同時収録!!電子限定おまけ付き!!
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[感想] 📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp

幼馴染だけど性的に好きです。 / 佐久本あゆ

[あらすじ]お年頃な蒼太と光希は幼稚園の頃から仲の良い幼馴染。光希がクラスメイトの脱童貞話を聞きつけ蒼太に愚痴りにやってきて、他に相手がいないから、と「キスの練習してみねぇ?」なんて言いだした!興味なさそうに相手をしつつ、心の中で全力で「いいよ!」と叫ぶ蒼太は何を隠そう親友ポジを維持しつつずっと光希に好意を寄せていたのだった!そんな心情も知らず、つたないながらもキスをしてきた光希に蒼太はこれ幸いと欲求を満たすべく賭けに出る―――!!!
心の中で愛を叫ぶクール男子×純情ピュアなおバカ男子。幼馴染み同士の変速的ラブコンフュージョン★単行本カバー下画像収録★【電子限定で描き下ろしの4ページ漫画が収録されています。】
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[感想]
クールな無表情で、受けに対する欲望まみれの呟きを、頭の中で思う存分、垂れ流してる攻めが面白かったw 攻めの拗らせ片想いかと思いきや、受けも同じくらい攻めのことを好きで、お互い相手に「絶対彼女作らせないぞー!」って思いから、阻止するためにキスやら合体やらに進むあたりのアホエロさも軽快でよかった。
表題作の他にスピンオフで、表題作カプの同級生くんの義兄弟との両片想いも収録されていて、こっちはジレジレ成分が多くて良い萌え〜だったわぁ。あのお兄さんなら、そりゃ好きになっちゃうわw お兄さんのお友達もいいキャラでいい働きしてた。

今夜、君と眠りたい / 滝端

[あらすじ]部下に慕われ完璧と揶揄されるほど仕事のできるサラリーマン・門崎。門崎には誰にも言えない、忘れられない夜があった…それは、五年前に関係を持った男娼・ナギと過ごした濃厚な日々。しかしそれも終わったことだったが……海外赴任から帰ってきた門崎は、社内でナギそっくりな二神という部下と出会い――。止まっていた時間が動き出す、滝端が描くセンシティブラブ!【描き下ろしあり】
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[感想] 積読中📚


こっちにおいで、オオカミさん / 篠田のばら

[あらすじ]まさか俺がヤられるなんて!? 人気AV男優でタチ専バイセクシャルの楓は、バーで好みの顔のユキと出会いお持ち帰りをたくらむ。首尾は上々、ホテルに向かったが――抱くつもりが抱かれてしまった! 記憶から消し去りたい事故だったのに、後日仕事でユキと再会。初ゲイビものの相手役がユキだったのだ。しかも楓がネコ役! 不満だらけだが「仕事はやり遂げる!」と撮影に臨んだ楓は、ユキに気に入られ口説かれるようになり…!? 
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[感想] 積読中📚


とりたん (2) / 山本 小鉄

[あらすじ]「鳥」の言葉がわかる犬崎は、カラスのクロに失恋。気遣ってくれる高校生・充を好きと自覚した直後、充からキスされた犬崎は!?
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[感想]
まさか2巻で完結?!いやぁ、びっくりした...。
1巻で謎だった充くんの秘密...何度も犬崎と会話していたカラスのクロが、実は充くんだったというところはわかりきっていたけれど、なんとその都度、違うカラスだったっていうのは想定外。そうか、いつもクロがかっこよく見えたのは中身の充くん効果だったのね......w 
犬崎さんも充くんも特殊な力を持っているけれど、キャラクターそのもののアクは強くないし、取り巻く環境とか生い立ち的にも突飛なものはないから、他の小鉄子さんの漫画よりも全体的にさらりとまとまっていた。

エブリデイ イズ ア グッド デイ / 西のえこ

[あらすじ]「俺には暁さんがキラキラ輝いて見える」双子の姉夫婦を事故で失って一年…サラリーマンの暁は、両親を失ったトラウマで喋らなくなった甥の旭日を預かることになる。慣れない子育てに悪戦苦闘している暁に救いの手を差し伸べてくれたのは、友人の弟・千尋だった。料理上手な千尋に助けられ、旭日と向き合おうとする暁…その一方で五年前から暁を好きだという千尋に心が揺れて―――? 
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[感想] 積読中📚


僕の美しいひと / カシオ

[あらすじ]「吉良が僕を抱いたのは、僕がセクサドールだから―――。」秘密を抱えながら全寮制の名門校に編入した忍。学校で一目置かれる存在の吉良と親しくなっていくが、彼に秘密を知られてしまい……!?
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[感想]
作品の世界観を引き立てているひっそりとした悲しみと温度の低い痛みがとても素敵。ヒューマノイドと人間の恋に見えて実は...という隠し球もあり、練られたストーリーを上手くハッピーエンドに持っていったと思った。絵の不安定さが、二人を取り巻く歪んだ世界を表しているようで、結果オーライ的な感じがしなくなくもないけれどw、美しい雰囲気の1作。
 
ところで交通事故後に兄弟の片方が死んで、その後、弟だった方が兄として(逆だったかも?)入れ替わるってエピソード、他でも数作読んだ記憶があるんだけど、なんの作品かわかる方いらっしゃいますか?漫画と小説どっちもあった気がするんだけどあやふやで探しようがない...。

飴色カリキュラム / 坂崎春

[あらすじ]恋のライバルは5歳児の甥っ子!? 幼稚園を舞台に巻き起こる、ハートフル・ラブストーリーv 料理人を目指し、レストランで見習い修業中の輝(ひかる)。けれど、定職につかず夢を追いかけているという理由で、彼女からフラれてばかり…。そんなある日、甥っ子を迎えに行った幼稚園で新人の葵(あおい)先生に一目惚れ!! 甥っ子の工(たくみ)が「将来は俺のお嫁さんにする!」と息巻く美人先生だv しかも、輝の夢をバカにせず優しく応援してくれる――背中を押されたのが嬉しくて、思い切って告白したら…なんとまさかの男だった!?【電子限定版】描き下ろし番外編「予行演習」収録。
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[感想]
ポップな表紙からもっとお手軽な感じの漫画かと思っていたけれど、意外にも丁寧なストーリーの運びと、キャラクター達の行動がきちんとした感情に裏打ちされたもので、誠実な作品という印象でなかなか良かった。でも設定も内容も割とよくある感じのBLなので、さらっと読んで終わってしまうかな。
甥っ子がいい味だしてるのに、いまいち生かしきれていないのがすごく惜しい。

チキンハートセレナーデanother story / 大島かもめ

[あらすじ]大島かもめの大人気コミックス「チキンハートセレナーデ」の未収録番外編が登場!! コミックスでは語られなかった松根の過去とは…?「drap2019年2月号」に掲載された後日談+雑誌drap2018年7月号実施応募者全員プレゼント「drap NEWフェイス折本」に収録された漫画を電子化したものです。
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[感想]
......この番外編を読んでちょっと色々と思うことがあるので、本編と合わせた感想を後々上げたいと思います。

何かいいの見つけた! Re: / ひなこ

[あらすじ]「小春が望むことなら何でもしてあげたいんだよ」
転校早々、本能に忠実・アホちん大杉先輩に押し倒された小春。あれよあれよという間に、ふたりは恋仲に☆周囲も空気を読むバカップルぶりは現在進行系。ところが、大杉の友達・鴫原と小春のクラスメイト・八度が絡んできて、何やら恋の四角関係・バトル勃発!?一方、大杉の小春を想う気持ちは日に日に濃くなっていき──?[あまあま加速のシーズン2!]
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[感想] 積読中📚


電子配信待ち

兎の森 1 / 苑生

※11/1に配信されたので購入しました。

狼への嫁入り〜異種婚姻譚~ / 犬居葉菜

※11/1に配信されたので購入しました。

龍の夫―亡国の神― / 須嵜朱

※...電子配信待ちといいながら、購入ちょっと迷ってる...。

ハダカよりも奥深く【単行本】 / 薄井いろは

※...電子配信待ちといいながら、購入ちょっと迷ってる...。

バイ・マイ・サイド / ナツメカズキ

愚者は経験で愛を語る / いさき李果

spilt milk -スプリット・ミルク- / dotsuco


では、また!
浅葱 拝

いたいけな弟子と魔導師さま / 水無月さらら(イラスト:yoco)

いたいけな弟子と魔導師さま / 水無月さらら(イラスト:yoco)

[あらすじ]殺されるなら、せめて死の恐怖を感じないくらい幼くなりたい――冤罪で国を追われ、樹海に捨てられた王子リシャール。哀れに思った精霊の魔法で、少年から5歳児になってしまった! そんな彼を偶然拾ったのは、森で一人研究に勤しむ美貌の魔導師ギスラン。「僕を弟子にしてくだしゃい!!」生き延びるため、身分を隠して懇願するリシャールは「ガキの子育てなんか冗談じゃない」と拒絶され!? 書き下ろし番外編「麗しき弟子と魔導師さま」収録。【SS付き電子限定版】




[感想]
森の動物たちとの交流や個性豊かな妖精たち、一角獣のユニコーンやドラゴンといったファンタジーのいきものも出てきて、王道ファンタジーの要素は盛り沢山だけど、娯楽系ファンタジーというよりは、淡々と魔道士とその弟子となった王子の関係の変遷を描いている叙事詩の雰囲気を持った物語という感じ。
怖い思いをすると幼児や赤ん坊の姿に戻ってしまう王子の体質が、物語全体を通してすごく活きている。王子のキャラはどの年齢のときも好きだ。
ストーリーと表紙&挿絵がベストマッチ。


では、また!
浅葱 拝

金のフォークに銀の匙 / かわい有美子(イラスト:麻生海)

金のフォークに銀の匙 / かわい有美子(イラスト:麻生海)

[あらすじ]有名な監査法人の看板公認会計士・不破はルックスもよく肩書きだけなら満点だが、性格は合理的で冷たい「観賞用」の男。ある日、交通事故に巻き込まれ、はずみで顔見知りの大学生・三谷に怪我をさせてしまった。世間体から仕方なく彼の面倒をみることになった不破。そんな裏など読みとれず、不破の社交辞令を優しさと勘違いする三谷の鈍さに初めは苛立っていたはずが、いつしか可愛く思えてきて―!?




[感想]
合理的で神経質な攻めが、受けのスレてない性格に揉まれるうちに、角が取れて人間味を帯びていくのが良い。
受けの三谷は、スレていないというか性善説で物事を捉えているというか、ある意味あどけない性格をしていて、読み始めは「えぇ...大学生でこんなキャラちょっとどうかなぁ......」と思っていたので、実は良いところのおぼっちゃんでって性格の由縁がわかるまでは、あまり好きになれなくて話に入り込めなかった。あと同居に至る流れのところで、受けのバイト先の店員達のノリが、いくら三谷の為であっても、あんな風にゴリ押ししていくのは、お客様の不破に対してあり得なさ過ぎてちょっと引いたし冷める。
そんなわけで中盤まではイマイチだなぁと思っていたけれど、不破と三谷が順を追って距離を縮めていくところや、三谷がパーティでゲス男の罠にかかって危機一髪...... ! 辺りの流れからは好き。



では、また!
浅葱 拝

家族になろうよ / 椿姫せいら(イラスト:いずみ椎乃)

家族になろうよ / 椿姫せいら(イラスト:いずみ椎乃)

[あらすじ]叔母が経営する保護猫カフェで店長を務める五十鈴は、学生時代の元彼から受けたひどい仕打ちがトラウマとなり、恋愛に臆病になっていた。ある日の閉店間際、五十鈴は店のガラス窓に一人の強面男性が張り付いているのを発見する。五十鈴が声を掛けると男は近くの建築現場の作業員で、前々からこの保護猫カフェが気になっていたが、こんないかつい男が入ってもいいものか悩んでいたという。こんな気遣いのできる人が中身まで怖いわけがないと思い、店に招き入れてみると、やはり男は心の優しい人だったようで、猫になつかれてしまう。涼星と名乗った男は、これを機に店の常連となる。見た目とは裏腹にやさしくて、意外にかわいい性格をした涼星に、徐々に惹かれていく五十鈴。しかしそんなある日、五十鈴の心に深い傷を残した元カレと再会してしまい……。
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[感想]
受けの優しく穏やかなキャラも、攻めの強面でありながら真面目で良識のあるキャラも、好感が持てる。
でもストーリーが何もかも王道......いや、王道というかテンプレそのもの。五十鈴の元彼の存在や元彼の暴挙、涼星側の事情も、妹の嘘とか義母の人物像とか、ありがち。ありがち過ぎて、いっこも盛り上がれないまま平凡に終わった感じ。
捨て猫の保護カフェという設定がもっとオリジナリティを生み出せていたら、王道設定でももう少し特別な話になったかもしれないのになぁと思う。まとまりは良いのでなんか色々と惜しい。


では、また!
浅葱 拝

そらのいとしい旦那さま / 野原滋(イラスト:サマミヤアカザ)

[あらすじ]双子の姉の身代わりとして隼瀬浦領主の長男・三雲高虎に嫁いだ空良。名前もなかった自分に「空良」と名づけ、男でも厭わず溺愛してくれる夫とともに穏やかな日々を送っていたが、高虎の父、現領主の時貞から、世継ぎのために高虎に女の正室を迎えるよう説得して欲しいと告げられてしまう。苦悩の末、空良が下した決断とは?電子限定書き下ろしSSを収録!!【イラスト付き】
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[感想]

2年半の幸せな日々と、浮上するお世継ぎ問題

前作より格段に仲睦まじくなって距離感が狭まった高虎と空良の様子に数年の時の流れを感じさせつつ、魁傑と次郎丸の掛け合いっぷりに変わらぬ日常を織り交ぜて心を和ませる始まりにホッとさせつつ、そこに新たな登場人物、孝之助と弥市が初っ端から登場。
立場が微妙な孝之助が不穏分子になるのかな...でも次郎丸との接し方を見ているととても良い坊ちゃんに思えるし...と今後の展開で悩みそうになるところで速攻、弥市が腹に一物を抱えている感を醸し出してくる。
弥市が高虎と空良にどんな風に絡んでくるのか心配になるのはもちろんのこと、空良には絶対つらく当たらないでよ...と思うんだけど、案の定、この野郎って感じで、空良に対して陰湿な雰囲気をぷんぷん振り撒いてくれちゃうわけで...。

空良の幸せ見守り隊の隊員としては、弥市の表面上の人となりと見え隠れする黒い部分の違和感に警戒心を抱きつつ、余計なことするなよ!って読み進めていたら、高虎のお世継ぎ問題に口を出すとかね...もうね、○ね!って思うわけです。

でも何よりもつらかったのは、弥市がお世継ぎ問題を口にして空良の心に不安の影を落としたあと。
詳しい事情を知らない城の下男が、空良の存在が邪魔になってるみたいな影口を叩いていて、それを聞いてしまった空良がより深く沈んだ気持ちになって、さらにお館様(高虎の父君)からも隼瀬浦のために...と正妻問題の話をふられるなんて...空良つらすぎるわ...。

高虎の一途な想いや曇りのない愛情をわかっているからこそ、心根が優しく本当に高虎を大切に想っている空良が、高虎のもとを離れようとする流れはテンプレだけど、空良が高虎に宛てて文をしたためる一連のシーンは...つらくて悲しいのに、空良の優しい気持ちが溢れていてグッときた。

後半は弥市の本当の目論みに巻き込まれた空良が、芯の強いところを見せて乗り越えるっていう展開で、新キャラの梟のふくにも見せ場があって、全体的に安定したストーリーの運びでした。

最大の山場...

私的には空良が身を引いて姿を消すことを決心したあとは、姿を消した空良と高虎のすれ違いとか、空良がどこかの地で高虎を想ってたった一人で暮らしてる様子とか、高虎が気も狂わんばかりに空良を探し回って...という不幸風味のラブロマンス展開で進めて欲しかった......というかそういうエピソードで”空良のことを想っている高虎”と”高虎のことを想っている空良”の心境をどっさり読みたかったです......。
弥市の目論見のエピを回収するために物語の最大の山場を展開していったところがね......ちょっと残念だったかなぁ。
前作に比べると空良と高虎の関係だけを描く物語ではないので、それを踏まえた上でこの構成にしたことはもちろんわかっているし、納得もするけれど...いちファンとしてはもう少し高虎と空良の感情に物語を寄せて欲しかった。

空良を男の伴侶として堂々と周辺各国に披露して、女性用の花嫁衣装を着て婚礼を行うのではなくて羽織袴の出立でっていうのは、空良が本当に認められている証拠で、良い終幕でした。空良の実父との和解も、空良自身は嬉しかったようだしね...。不安要素を綺麗にまとめ上げた感じ。
私はあの父親が空良の人生にしてきた仕打ちは一生忘れないし、許したくないけどね←w


前作は空良の健気さに一冊泣きっぱなしだったけれど、今回は手紙のところだけホロリとした感じ。
...良作だったけれど、うん、やっぱり総合するとちょっと物足りなかったかな。

ということで、二人の感情に寄り添った幸せで甘い日常話を読みたいので...再販された同人誌「そらと旦那さま」注文したよ✨
J庭行けなかった勢の救済ありがたや。・゚・(ノД`)・゚・。


では、また!
浅葱 拝


[感想] 📌前作の感想がこちらにあります。
blnote.hatenablog.jp