きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

2月に購入したBL小説(全8冊)

この記事をまとめていて、2月発売で購入予定だったのに取りこぼした作品が複数あることに気がついたw
ということで2月は少なめの8冊です。

(順不同/敬称略/あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)
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竜騎士は最愛を捧げる / 佐竹 笙(イラスト:)

[あらすじ]
竜を惹きつける匂いを持つために「竜殺し」と呼ばれる一族に生まれたリクは、病に倒れた母親を助けるために「竜狩り」に加担する。だが竜の傷つく姿を目の当たりにし罪悪感にかられたリクは、竜の国に助けを呼びに行くことを決め、そこで騎士団隊長のアルヴィンに出会う。母を看取れなかった後悔や孤独感から涙が溢れるリクに「自分を否定して、傷ついて泣くな」とアルヴィンは優しく受け止めてくれるが、アルヴィンに自身の出自を告白できないまま故郷に戻ることになり…?


[感想]:
クールでイケメンでスパダリ属性の攻め様なのに、リクに”ブルードラゴン(の自分)”をベタ褒めされて赤面・照れまくり・挙動不審になるのがツボ。リクの体質のせいで密着してたらナニがナニな状態になって、それを部下に察せられるとか...かなりいいキャラしてたw
誘拐された竜を救って解決なのかと思っていたら、後半には「ユニノの民」に関するシリアスな展開が待っていて、”魚類の体外受精”的な方法で種の絶滅危機を防ごうとしてきたことなど、オリジナリティを感じられる設定で面白かった。ただ枢機卿が良い人っぽく受け入れられてたけれど、ユニノの民に対するこれまでの政策を見ていると決して聡慧で良い人物とは思えず、どういう人物として描きたかったのかな...いまいち人物像を描ききれていなかったと感じた。
文章力に拙さを感じる部分もあるけれど、なかなか面白かったです。


いつかあなたに逢えたなら / 片岡(イラスト:yoco)

[あらすじ]
疎遠だった父が死に、桐ヶ谷律は父が子供を売買する犯罪者だったことを知る。父の屋敷には、かつて「商品」だった美しい青年・蒼生が遺された。戸籍もない蒼生を追い出す訳にいかず、二人はともに暮らすことになるが、律は娼婦だった蒼生を嫌悪し冷たくあたった。しかし何故か蒼生は「お役に立ちたい」と懸命に尽くしてくる。一方通行の関係は、律が友人に裏切られ、怒りをぶつけるため蒼生を抱いた夜から変わりはじめるが……。



[感想]:
金持ちの小児性愛者のための”商品”として生きてきた蒼生が、唯一の”優しい想い出”として大切にしてきた想いの先の律に盲目的になる心情は理解できる。商品として生きてきた以外に何もできないことや、自分の存在自体がひどく特殊なことも自覚し申し訳なく思っていて、律にどんなに辛く当られてもただただ受け入れる静けさはとても好き。
ただ律については、父親について拒絶感を持って負の感情にまみれるのは理解できるけれど、それを蒼生にぶつける態度にはとても不快感を覚えた。仲間との会話もそうだけど、短慮で癇癪持ちで独善的で、上手くいっていっている時は良いけれど、上手くいかなくなったら機嫌が急降下して周りに当たり散らすタイプ。蒼生を嫌悪するように無視し、散々な態度を取っていたのに、セックスしてからの突然の変わりようときたら...。受けの蒼生の心情に比べると、攻めの律の心の動きは大雑把にしか描かれていないのが惜しまれる。
初めて出逢った庭が美しいファクターになっていて、静寂をはらんだ文章と全体的な雰囲気には魅力を感じた。
こちらが商業デビュー作ということですが、この作品はいかにもBL的な特殊な身の上の主人公を描いているということもあり、独特の雰囲気とオリジナリティを上手く練り合わせていたと思いますが、今後どういう題材で自分の作風を作り上げていくのか、本作以降の作品創りが気になる新人作家さんだと思います。


パブリックスクール —ロンドンの蜜月— / 樋口美沙緒(イラスト:yoco)

[あらすじ]
二年間の遠距離恋愛が終わり、ついに恋人の待つイギリスへーー。名門貴族の御曹司で巨大海運会社CEOのエドと暮らし始めた礼(れい)。まずは自分の仕事を探そうと、美術系の面接を受けるものの、結果は全て不採用!! 日本での経験が全く役に立たない厳しい現実に向き合うことに…!? エドの名前には頼りたくない、けれど恋人の家名と影響力は大きすぎるーー甘い蜜月と挫折が交錯する同居編!!




[感想]:
📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp


狼王の思し召し / 栗城偲(イラスト:榎本あいう)

[あらすじ]
幼い頃、獣人の少年の持つ指輪と、宝物の計算機を交換して結婚の約束をした乃亜。それから数年後。身寄りをなくし、田舎から街へ職探しに出た乃亜は人攫いにあってしまう。助けてくれたのは、あの日の少年・魁だった。獣人国の王となっていた魁は「あの日の約束は今でも有効だ」と乃亜を花嫁として迎え入れ、優しく愛を囁いてきて……!?種族も身分差も乗り越える二人の切なくも甘いラブストーリー。




[感想]:
乃亜がそろばんを用いた計算や会計知識で、乃亜を遠巻きにしていた城の獣人達に認められることや、帳簿の確認から新たな事件に繋がっていく成り行きは自然なんだけど、全体的に問題を深く掘り下げることなく解決して次に展開していくので、小説としてはだいぶ物足りない。戦争、横領、人身売買、前王の後宮の愛人といった問題が扱われているけれど作品全体の雰囲気に深刻さはなく、問題が起こってもトントン拍子に解決するので、さらさらと読み進む。乃亜と魁が絆を深めて仲睦まじくしていくのを見守りつつ、弟の理央の可愛いもふもふショタ感を楽しんでさくっと読了。


獣人アルファと恋の迷宮 / 成瀬かの(イラスト:央川みはら)

[あらすじ]
養い親を亡くし孤児シシィは迷宮都市へとやってくる。二十人もいる幼い弟たちを養うため、死に神のように禍々しい姿をしたオメガ嫌いの獣人・ラージャと組んで迷宮へと潜り始めたシシィはベータだと思っていたのに突然発情期に襲われ驚愕。激怒したラージャに嘘つきと責められた挙げ句激しく抱かれ妊娠してしまう。一人で子供を産む決意をするも、気づいたラージャが求婚してきて──。プロポーズは子供ができたから? それとも……?



[感想]:
📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp


ロマンス不全の僕たちは / 月村 奎(イラスト:苑生)

[あらすじ]
もう長い間、恋をしている。美容師の昴大には秘かに想う相手がいた。芸能事務所にスカウトされるほどかっこよくて、才能があって、だけどどうしようもなく愛想がなくて言葉がきつい同僚、遠藤進太郎だ。周囲からは明るくムードメーカーと思われている昴大だが、本当は傷つきやすく、臆病な一面を持っていた。だから、遠藤にも告白するつもりはなく、今の、一番親しい同僚という立ち位置で十分なはずだった。それなのに、遠藤の地元へ引っ越して、遠藤の美容院で働くことになってしまい!? 無口無愛想×隠れ繊細のハートフルラブ登場!



[感想]:
片想いを隠しながら想い人・遠藤の友人としての立ち位置でそばにいる昴大の気持ちが繊細に描かれていてギュンとくる。明るく振る舞っているのに軽薄で嫌な印象にならない文章力があるので、振る舞いの裏に隠された臆病な心の動きに真実味が灯っている。
ずっと平行線を辿っているように見える二人だけど、デレ要素一切なしの塩対応な態度に見えた遠藤が実は「デレまくり」っていう...わかりづらいわw そのわかりづらさすら魅力になるんだから得してるな遠藤。
遠藤の言葉のなさに物足りないと感じないわけではなかったけれど、本編後の「雪の日の帰り道」で、遠藤視点の昴大とデレまくりの遠藤の心の声を聞けて満足。
片想いのせつなさを描いているけれど、いつもの月村奎さんのテイストとは少し違って、感傷的になり過ぎていないのがすごく新鮮だった。


見初められたはいいけれど / 水原とほる(イラスト:ミドリノエバ

[あらすじ]
留学準備で来日した、取引先の大企業の御曹司――その女癖が悪いと噂の放蕩息子の世話を、上司に命じられてしまった!! 内心の不満を押し隠し、部屋を訪れる澄人(すみと)。ところが、その男ジョッシュに、「面倒を押し付けられて、イラついてるね?」と、笑顔であっさりと見抜かれてしまう。評判と違って、洞察力に優れたかなりのクセ者だと驚く澄人だが、なぜかその後、連日呼び出されるようになり!? 



[感想]:
種類の異なる孤独を抱えている澄人とジョッシュだけど、ジョッシュが澄人の孤独を知る前に澄人に魅かれたのに対して、澄人はジョッシュの内なる孤独感に気づいたことでジョッシュのことが気になるようになる辺りの”孤独感”の扱い方がとても良かった。
澄人にとって人生は平坦さを求めるものだったけれど、最後の数行で”第三の人生”が始まって人生に”謳歌する”という意味が加わったことを感じさせるサラッとしたまとめ方がスタイリッシュだった。
個人的にはジョッシュのマイペースさと無邪気さを感じさせるような振る舞いは、結局”どこまでも富豪のお坊ちゃん”という感じで、魅力を感じさせるキャラクターではなかったのが残念だった。


偽りの王子と黒鋼の騎士 / 六青みつみ(イラスト:稲荷家房之介

[あらすじ]
グレイル・ラドウィックの愛と忠誠を、この僕に!ローレンシア王国の一粒種・エリュシオンは、蝶よ花よと育てられ、我が儘を我が儘だと思わず生きてきた。そんな王子に唯一靡かなかったのは、護衛騎士グレイル。エリュシオンは運命が変わるという魔法の水鏡に、グレイルのことを密かに願う。その時、世界は一変した。偽王子の烙印を押され、凋落したエリュシオンはグレイルの下僕となる。シオンと呼び捨てられ、一から育てなおすかのように接せられるうちに、シオンの中で捨てられずにいた気持ちが溢れてくるが――!?



[感想]:
シオンが肉体的にむごい目に遭うことも勿論つらいけれど、自分がいかに無知で、傲慢で、愚か者だったのかということに気づくシオンの姿に胸がつまる。過酷で残虐な試練のような苦しみを重ねながら、シオンが一人の人間として成長(再生)していく中で、グレイルに対する一途な想いの揺れ動く様が綿密に描かれていて、かなりの読み応え。
物語の佳境に入って、グレイルが凋落したばかりの頃のシオンに対してもっと親身になってやれたのではないかと悔やむけれど、ローレンシア王宮で政治利用するための傀儡としてわざと無知で傲慢なわがまま王子として放置されていた真実を知る由もなかったのだから、実際に対面していたまんまの愚かな王子のエリュシオンに、あれ以上の好意を持って配慮する気持ちになるのは無理だったんじゃないかな。グレイルに関してはむしろシオンを好きだと自覚してからの態度の方が、モヤッとしたり腹立たしく思ったりした。
個人的に気になったのは、シオンとは逆に本物の王子としてローレンシア王宮に入ったエリュシオンの方で、あちらはシオンのように肉体的に悲惨な目にあってはいないけれど、彼も政治に利用されるために人生をねじ曲げられた人物なので、大神殿に移住した後の人生が実のあるものになっていればいいな...という気持ちになった。
今まで読んだ六青みつみさんの作品の中で一番好きかも。



では、また!
浅葱 拝

パブリックスクール —ロンドンの蜜月— / 樋口美沙緒(イラスト:yoco)

[あらすじ]
二年間の遠距離恋愛が終わり、ついに恋人の待つイギリスへーー。名門貴族の御曹司で巨大海運会社CEOのエドと暮らし始めた礼(れい)。まずは自分の仕事を探そうと、美術系の面接を受けるものの、結果は全て不採用!! 日本での経験が全く役に立たない厳しい現実に向き合うことに…!?
エドの名前には頼りたくない、けれど恋人の家名と影響力は大きすぎるーー甘い蜜月と挫折が交錯する同居編!!(電子書籍サイトの作品内容より)



[感想]

現実と理想と...日常の先に続いていく未来について

イギリスでの生活と職探しを通して、礼とエドの間に横たわる”持つ者と持たざる者”という障害が顕著となり、イギリス名門貴族の御曹司で世界有数の海運会社のCEOである”エドワード・グラームズの恋人であること”と”中原礼の人生”について改めて向き合う礼の苦悩と愛を綴った1冊。
礼のエドに対する感情、差別に対する落ち込み、美術という仕事に対する思い等々、概ね予想された内容だったけれど、ここで一つの区切りとするために礼自身が「愛さえあれば大抵のことは飲み込める」という心境に至る必要があったのだろうと思う。

礼の核となる”純粋さ”

ただ、礼の核となっている純粋さは子どもっぽさでもあり、周囲を傷つける残酷さと傲慢さを孕んでいるのだと思わずにはいられなかった。
特に芸術家を大切にしたいという純粋さで、「デミアンを愛しているけれどロブのことも救いたい」という決断を下したことは、礼自身の心を穏やかにしたかもしれないけれど、デミアンに降りかかった火の粉は結局、いつまでも燃え続けるものだと思う。

ロブを根っからの悪人ではないと信じたいから贖罪の方法(SNSで応援メッセをポストするという方法)を示すという提案は、ロブの罪悪感を軽くしただろうし、オープニングセレモニーでデミアンが、作品が自由になることでデミアン自身が恐れから自由になった気がすると心境を語ったことで、礼自身、自分が下した決断の免罪符になったかもしれないけれど、アートがたった一人の誰かの心に届くことの大切さや、人にどう受け入れられるかという概念的な事柄と、「作品を預かる人間が盗作を見逃す」ということはまったく別の問題で、同じ土俵で扱うべきことではないのに、そこを同列に考えてしまう礼は芸術家各々の最大の理解者にはなれても、一流のギャラリストにはなれないんじゃないのかな。
仕事が純粋さだけで成り立っているわけではないことを痛感して尚、あの決断をくだせるのは、残酷な子どもっぽさと冗長な自己満足以外の何物でもないと思う。

とは言え、「神様がキスをして魔法をかけた指」という言葉を信じて抱き続けてきた礼の純粋な強さと甘さは、どんなことがあっても欠けない部分で、それが礼を礼たらしめていて、礼を大切に思う仲間達がそういう礼を丸ごと愛しているのだから、外野は黙っとれってやつでしょうけどね...w

エドパブリック・スクール時代の友人である有力者達に囲まれている礼が、最後の最後に仕事のことでエドを頼り、ロブの件で下した決断に対する友人達の惜しみない協力を得て、礼自身が”持たざる者”から”持つ者”へとなった(持つ者の経験をした)という意味で、この「ロンドンの蜜月」で礼は大きな転換期を迎えたのだと思います。



結局のところ、礼はエドと対等ではなく、一生、対等になれない寂しさを感じて礼は生きていくんだろうけれど、それを認められるようになった分だけ大人になった礼の心境を描くような静かなエンディングは、感情が吹き荒れた本編との対比になっているようでとても気に入りました。


この「ロンドンの蜜月」で、エドと礼の物語はひと段落がついた印象を受けました。
4月28日発売予定のパブリック・スクール新刊は他のキャラの話なのか、それともこの先のエドと礼の話なのか...気になりますね。


では、また!
浅葱 拝

㊗️ on BLUE 9周年❗️

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祥伝社のBLレーベル on BLUE ㊗️ 9周年✨

ということで、私が持っているon BLUE 作品をまとめてみた❗️
この他にも借りて読んだ作品が色々ありますが、あくまでも私が購入して所持しているon BLUE作品です。

on BLUE はクセのある作品が多い印象ですが、好きなレーベルです。

秀良子さん

■STAYGOLD 1〜5 ■宇田川町で待っててよ。 ■年々彩々
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ひとこと:
秀良子さんは「宇田川町で待っててよ。」を読んで心を掴まれて、その後作家買いするようになりました。心の不安定さ、不器用さ、複雑な感情の動きを、繊細になりすぎず、かといって大袈裟すぎもせず...という等身大の描写の振り幅で描いているのに、読み手側の心に感情的な動きを生み出すところがとても魅力的だと思っています。


はらださん

ワンルームエンジェル
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ひとこと:
たぶん他社の作品も含めてはらださんの作品は、最新作の「ハッピークソライフ 」以外はすべて読んでいると思うんですが、はらださんの作品の登場人物は、残酷さもアホエロさもクソっぷりもとんでもない闇(病み)も、どこまでもとことん晒すのに、読み手が感情移入するのを拒絶する距離感を持っているというか、近づかせないぐらい濃密に閉じられた世界の中にいるように感じるので、読み終えたあと、どんな感想を抱いたら良いのか自分でもよくわからなくなります。突き放されて突き落とされるというか。
この「ワンルームエンジェル」はそれまでの作品とはまったく趣の違う作風になっているのに、やっぱり彼らの心情に近づくことは許されない感じがするというか、表面的にわかった気になるなと言われるような気がして、感想を書こうにも上手くいかなかったという...w
2019年のマイベストに入れるべきか一番悩んだ作品がこの「ワンルームエンジェル」でした。


くれの又秋さん

■愛し
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ひとこと:
くれの又秋さんの作品の中では、この作品が一番好き。「BL史上、最高のリバ、誕生」というキャッチコピーがついているけれど、私はリバに思い入れがあるわけではないので、これがBL史上最高のリバなのかはわからなまま今に至りますw 

緒川 千世さん

■赤のテアトル
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ひとこと:
これ定期的に読み返したくなって、読む度に鬱々となってしまうのにまた読み返したくなる。病み系の緒川千世さん作品の中でかなり気持ち悪さがズーンとくる作品なんだけど、愛なのか憎しみなのかがわからなくなる泥沼な関係を必死で繋ぐ主役二人の関係が妙に癖になるというか、読み返したくなります。
緒川千世さんも単行本の9割ぐらいは持ってるかなぁ...。「カーストヘブン」は一時期、離脱しそうになったけど...。今、マガジンビーボーイ連載中の「やまない不幸の終わらせ方」も早く単行本になって欲しいと思ってるんだけど、昔描いてたみたいな「ラクダ使いと王子の夜」のような純粋で真っ直ぐな優しさとせつなさが同居しているような作品も久しぶりに読みたいなぁ。


のばらあいこさん

■寄越す犬、めくる夜 1〜4
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ひとこと:
いよいよ佳境に入ってきて完結も見え始めた「寄越す犬、めくる夜」。4巻の感想でも書いたけれど、「菊池には敵わなかったけれど、新谷くんのことがほんとうに好きだったよ」って須藤の言葉で、須藤の終わりが近づいているような気がする。それを裏切って救って欲しいと思う気持ちと、ここまできて3人でハッピーエンドになったら興醒めするかもしれないと思う気持ちで、なんだか私の中で訳のわからないハッピーエンド vs バッドエンドの葛藤が渦巻いてる。
のばらあいこさんはもう一つの長編人気作「秋山くん」(東京漫画社)が合わなくて1巻で脱落しちゃったんだよね...。


西本ろうさん

■この背中に爪を立てて
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ひとこと:
不倫だからゲスとかいうわけじゃなくて、人間性がゲスく自分のことだけしか考えていない人物しか出てこなくて誰にも共感できず、正論吐いた人物すら好きになれなかったw そういえばCannaの「トワイライト」も登場人物好きになれなかったんだよね...。でもストーリーは読ませる系で気になるから、何だか購入してしまう作家様です。


朝田 ねむいさん

■Dear, MY GOD
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ひとこと:
雰囲気が文学的で独特の世界観が好き。でも中盤にもっと背徳感が欲しかったかも。人気作の「マイリトルインフェルノ」は上下巻それぞれの試し読みで、ノリが合わなさそうと思って読んでいないんだけど、気にはなってる。すっごく気になってる。


松本ミーコハウス さん

■ 美しい野菜(全3巻) ■お遊びはそこまで
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ひとこと:
実は松本ミーコハウスさんの絵は苦手なんだけど、「美しい野菜」の1巻試し読みで異様に気になって購入した後、SMとか道具を使ったプレイとか好きじゃないのに、ストーリーが興味深くて全巻そろえて、スピンも買ってしまったw 説明しきれない魅力を感じたシリーズです。


京山 あつきさん

■ヘブンリーホームシック ■3番線のカンパネルラ ■スリーピング・バグ
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ひとこと:
京山 あつきさんの作品は、派手さのまったくない物語の中で、心理描写を丁寧に重ねて攻めと受けの関係性を築いていく作風がどこまでも誠実で心に染み込みます。

「3番線のカンパネルラ」は過去に感想を上げています📌
blnote.hatenablog.jp


彩景でりこさん

■蟷螂の檻 1〜4
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ひとこと:
彩景でりこさんの歪んだ人間関係や愛憎劇がすごく好きです。3巻から典彦の狂気が読む人を選ぶ状況に突入しているので、このままどこまで突き進んでいくのか...典彦と育郎がタイトルについている”蟷螂”の生態通りの結末に行き着くなら...闇エンドだよなぁ...。


犬居葉菜 さん

■狼への嫁入り〜異種婚姻譚~
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ひとこと:
2019年マイベスト漫画にも選んだこちらの作品。次作も楽しみな作家様です。

「狼への嫁入り〜異種婚姻譚~」は過去に感想を上げています📌
blnote.hatenablog.jp


藤原旭さん

■忍べよ! ストーカー
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ひとこと:
感情過多で全然忍べてない忍びの紅丸と、天然の領主・獅之介のボケとボケの関係性が面白いw 二人を取り巻く人物たちも悪意や毒心がなくて、嫌な気持ちになることなく1冊を楽しめます。


ダヨオさん

■YOUNG BAD EDUCATION ■YOUNG GOOD BOYFRIEND ■YOUNG GOOD BOYFRIEND 番外編 メモリー
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ひとこと:
先生の「情けない大人」のくたびれ感が、不器用で臆病ながら恋愛に昇華されていくのがすごく自然。歳の差のある二人がこの先の長く続く人生も二人で歩んでいくんだろうなぁという思いを抱く番外編まで読んでこそのシリーズ作品。


イシノアヤさん

■トリガー
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ひとこと:
自分を偽って生きているつらさの吐け口(発散)としての、脅迫や暴力や相手の人間性を貶める行為が許されるとは思えないし理解したいとも思えないけれど、相手がそれを受け入れて、寄り添って、苦しみから解放する関係になっているので、本人達にとってはハッピーエンドなんだろうけれど、...とても胸糞でしこりを残す作品だと思います。


SHOOWA さん

■ニィーニの森
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ひとこと:
とても好きな作品で紙でも電子でも持ってます。オムニバス形式の一冊で、BLというよりはユートピアを求める動物達の様々な人間模様が、深く心をえぐる物語。ウルフとココの話はせつなすぎて何度読んでも苦しくなって涙ぐむ。


恋煩シビトさん

■溺れる ■バラ色の時代
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ひとこと:
独特の空気感があり、ハッピーエンドであっても読了後に何ともいえない感傷的な気分になるのが恋煩シビトさんの作品の一番好きなところです。


カシオさん

■心を殺す方法 全4巻
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ひとこと:
一人で背負うことのできない重荷を二人で背負って生きて行くという結末の共依存は、個人的な性癖にとても突き刺刺さる。でも正直にいうと萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」的な話を書きたかったのかなぁという印象を持った。とはいえ、カシオさんの作品の中ではこれがダントツに好きです。


芽玖いろは さん

■喪服の花嫁
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ひとこと:
📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp


雁須磨子さん

■うそつきあくま 上下
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ひとこと:
「好き」と思う気持ちに小さな劣等感や嫉妬心が混じってしまって拗れていく感情...雁須磨子さんの描く”面倒臭い人”ってほんと人間臭くて面倒な人なんだけど、段々とそれがいい意味で呆れつつ叱咤激励したくなる魅力(?)がある。人間のどうしようもできない感情を描いている人間ドラマ。


ためこうさん

■泥中の蓮
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ひとこと:
エピローグのために構成されたストーリが巧み。共依存と執着、兄弟、という性癖どストライク作品。ためこうさんの作品は試し読みでほぼ合わないわー...って感じなのでこの1冊しかちゃんと読了したことがないんですが、この1冊が好きなら他の作品も読まず嫌いなのかなぁ...。


阿仁谷 ユイジさん

■もういちど、なんどでも。 上下 ■もういちど、なんどでも。アフターエピソード ■もういちど、なんどでも。 アフターエピソードの行間の話 ■両片恋のススメ
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ひとこと:
阿仁谷 ユイジさんの作品の、攻めがある一瞬に途方もなく性的に”男”の顔を見せるのがたまらなく好き。「もういちど、なんどでも。」「因果性のベゼ」の時系列に捻りが生じるストーリーは読み応えがありますね〜。


えすとえむさん

■equus
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ひとこと:
異種恋愛譚8編を収録した短編集。とても叙情的で詩篇の様な美しさとせつなさが綴られています。絵と世界観が独特で素敵な作品です。


新井煮干し子さん

■渾名をくれ ■因果の魚
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ひとこと:
自分の解釈があっているのかわからない複雑な2作品です。特に「渾名をくれ」の方は、あとがきによれば元々は「信仰」の話を書きたかったということなので、天羽の頑なさとか、ひっそりとした愛し方とか、自己完結している身勝手さは、多分そういうところから作り上げられたキャクター性なのかなぁ。お互いを好きだということは間違いないんだけど、噛み合わない気持ちでお互いを想っていて、ずっとジョゼが幸せそうに見えないんだけど、結末としては二人でいる幸せにたどり着いていて、すごく難解な二人だった。


山中ヒコさん

■500年の営み
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ひとこと:
自分の行動の”意味”をわかっていないのに尾瀬に向かうポンコツBのことを考えると(Bの行動を追って物語を読むと)泣けて仕方ない。淡々としている物語の運びが余計にせつなさを帯びて、誰の視点で読むかでせつなさの意味合いも変わってくる。山中ヒコさんのBLの中でも一番好きです。


須嵜朱さん

■龍の夫―亡国の神―
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ひとこと:
無骨な絵柄と独特の世界観があります。
📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp


では、また!
浅葱 拝

十二国記「白銀の墟 玄の月(全4巻)」を読み終えて。

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昨年、18年ぶりの長編新作として刊行された十二国記「白銀の墟 玄の月(全4巻)」を読み終えました。
といっても、年始の休暇中に読了(1周目)はしていたんですが、1周目はただただ夢中になってのめり込むように読んで、2周目に突入。
2周目は気になるところに付箋を貼ってメモを取りながら読み直して...ようやく自分なりに感想というか考察というか、思ったことを書きたい心境に至ったというところです。

...付箋貼りすぎw
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戴国の怒濤を描く一大巨編「白銀の墟 玄の月」

1巻から感想をまとめ始めたけれど、「白銀の墟 玄の月」に行き着いた戴については「黄昏の岸 暁の天」を語らないわけにはいかず、泰麒・李斎・驍宗については「風の海 迷宮の岸」を、蒿里(こうり)(高里要)については「魔性の子」を...という思いがあり、またこの「白銀の墟 玄の月」はこれまでの十二国記のそれぞれの物語の積み重ねがあってここに至ったわけで、それらを語らずにどうやってまとめればいいのか...。
というか語りたいことが多すぎる...。

色々と悩んで、十二国記の全巻の感想を別のブログにて上げることにしました。
そもそもここはBL本の感想ブログだしね...。


十二国記のブログについての予告

  • 十二国記はこれまで3レーベルから出版されいて、私は講談社X文庫ホワイトハート版と新潮文庫完全版の両方を持っていますが、ブログでは新潮文庫完全版の感想で、まずは戴国メインの話の感想と考察を上げようと思います。でも「白銀の墟 玄の月」について早く語りたい気持ちがあるので、もしかすると第一弾を「白銀の墟 玄の月」にするかも。
  • 戴のあとは公式のナンバリング順にする予定。
  • 今ちょっと悩んでる点としては①浅葱名義でやるか②感想(と考察)とは別に、編集の仕事でやっているような書評とレビューの形式でも書くか。感想/書評/レビューは違うっていう編集者の視点で書き比べてみようかと。


そちらのブログも(まだ準備中ですがw)、ご縁がありましたら読んで頂けると嬉しいです。

というわけで、

十二国記のブログと並行している間は、このBL感想ブログは今までより鈍足になると思います......とか書いててこれまでの更新頻度チェックしたけど、言うほど頻繁に更新してないw 

何にせよ、十二国記の方は発売からリアルタイムで感想を上げるというわけでもないし、むしろ自分の記録的な意味合いで作るので(なにせ十二国記との出会いは中2だったから思い入れが大きいw)、急いで書く必要はないと思って挑み(?)ます。

並行している間はブログやってて楽しい方を優先することになるんじゃないかな。


では、また!
浅葱 拝

華は褥に咲き狂う 1 〜 5 / 宮緒葵(イラスト:小山田あみ)

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[あらすじ]
恵渡(えど)に幕府が開かれて百年あまり。庶出ながら奇妙な巡り合わせで八代将軍となった十八歳の七條光彬(しちじょうみつあき)は、このたび都より御台所を迎えることとなる。だが嫁いできた相手は、絶世の麗人ではあるものの紛うことなき男子だった。「お会いしとうございました、背の君」そう告げる御台――純皓(すみひろ)から本気の熱が感じられ困惑する光彬。そして迎えた初夜、純皓は巧みな手練手管で、女性嫌いで初心な光彬の身体を開いていき……? 御台所×将軍の豪華絢爛色恋絵巻開幕。(電子書籍サイトの作品内容より:1巻)

感想:

架空の世界の恵渡(えど)幕府が統治する時代の八代将軍と御台所の濃厚愛を綴った時代劇

至極真面目な時代小説の様相を呈する物語でありながら、八代将軍光彬のもとに嫁いできた奥方が男だったというとんでも設定で、更にカップリングが御台所(妻)×将軍(夫)という絶妙さw
1巻読んだら面白くて予定外に5巻まで一気読みしてしまったw

八代将軍光彬は剣豪であり、男気と義心にあふれる実直さで将軍としても人間としても申し分なく完璧、...でも自分に”人たらし”の魅力があることにはまったく気づいていなかったり、色恋に関しては朴念仁...というギャップ萌え。
一方、御台所の純皓は、慎ましやかに大奥をまとめ、妖艶な美しさで周囲を魅了しながら将軍を支えるたおやかな妻...でありながら実は西の闇の組織「八虹」の頭として相当な手練れの豪傑。
「八虹」の頭としての冷酷なキレ者っぷりもいいけれど、純皓の1番の魅力はやっぱり上様に対する並々ならぬ執着心w
執着心と嫉妬心で雄み全開になる床入りエピがどの巻にも複数回あってw 濃厚エロスむんむんです。小山田あみさんの挿絵も悶絶モノの美麗さ...眼福。

巻ごとに持ち上がるやんごとなき事案×二人の関係性の変化も見どころ

1巻は御台所として男の純皓が光彬のもとに嫁いで来て、光彬が純皓を受け入れるまでの比較的シンプルなストーリーだけど、2巻からは二人を取り巻く周囲にやんごとなき事案が持ち上がって、それらを解決に導きながら二人の関係性がより強固なものになっていく構成で納得の面白さです。
特に2巻は恵渡の町に辻斬りが現れ、それを追ううちに妖刀「鬼讐丸」や東の地の闇組織「紅鞘」等の謎も絡み出す中で、夫婦となって蜜月を過ごしつつも闇の組織「八虹」の頭であることを隠したままの秘密を抱える純皓の煩悶が描かれていて、物語のふくらみと読み応えが一番好きですね。
3巻では「上様の種」を残したい幕閣たちが、光彬のもとへ側室候補を送り込んできて...というお世継ぎ問題を主軸にして、陰陽道の呪いという要素も取り入れつつ、光彬と純皓が夫婦の絆をさらに揺るぎないものにするための物語になっています。シリーズ全体を通して読むと光彬が幼弟・鶴松を大切にしている描写がこの3巻であるのもよくできてるなぁと思います。
4巻は光彬が信頼し、剣術の好敵手として好感を持っていた御三家筆頭・尾張藩の七條彬春が恵渡にやって来て、純皓の嫉妬が大爆発の巻w 事件の活劇的展開と相まって躍動感のある4巻です。2巻で「八虹」の構成員であることは告白したものの、頭として冷酷非道な行いをしていたことはずっと伏せていた純皓がようやく真実を告白し、光彬に受け入れられるという激アツの展開もあり、4巻も盛り沢山で好き。
5巻は光彬の父で先代将軍の隠し子問題の裏側にある人身売買がテーマになっていて、真の吉五郎との最初で最後の対面のエピソードは思わずグッときた...。


最初は純皓の強烈な執着心を丸ごと受け入れる光彬の度量のデカさよ...と思っていたけれど、光彬は光彬で純皓にベタ惚れ of ベタ惚れ。巻が進むごとに純皓の手練手管にどっぷりハマって濃厚な肉体の交わりに積極的になってるしw とにかくこの二人の相思相愛いちゃラブっぷりは突き抜けて甘いシリーズものです。

小説としてもしっかりとした筋立てで、時代劇のお約束を踏んだ勧善懲悪の締めになっているところもこの物語にあっています。時代小説というとちょっと腰の引ける部分もあるかもしれませんが、この「華は褥に咲き狂う」は時代特有の考察的背景や役職等をほどほどの説明でまとめているので、くどくどしておらず読みやすく、物語の面白さが前面に出ていると思います。

次の6巻は5巻の伏線の純皓の異母兄・麗皓と、謎の人物(神?)玉兎の話になるのかな?どういう事案と絡めた物語になるのか、楽しみですね〜。


最後に個人的希望をちょこっと。

  • 「紅鞘」の陽炎さんが上様の配下になったのにあまり登場しないのが残念だから、この先の物語で活躍してくれたら嬉しい。愛妻家・祐正との関係もちょっと気になるw
  • 今後もこの華は褥に咲き狂うシリーズは是非とも小山田あみさんのイラストでお願いします...もうこのシリーズはイメージが小山田あみさんの絵で固定されていて他は受け入れられそうにないw



それにしても5巻に至ってもまだ咲と門脇のことを”仲睦まじい夫婦”と思ってる光彬w...門脇さん不憫なりw

では、また!
浅葱 拝

2月に購入したBL漫画(全9冊)

3月ですね...ひと月過ぎるの早過ぎます...。

ということで2月に購入したBL漫画全9冊です。
続刊を待っていた作品あり、初めての漫画家さんの作品あり、今回も"絶対気になる"と思った漫画を厳選チョイス。
この9冊以外に数冊”ちょっと気になる”という漫画があったんですが、読む時間を取れそうになくて断念...仕事って増えることはあっても減ることはないですよね......。

ではどうぞ〜。
(順不同/敬称略/あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)
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神様のウロコ(2) / 日ノ原巡

[あらすじ]土地を守る龍神・鱗に嫁にと求婚された、休筆中の小説家・智治。求婚は断ったものの、人懐っこい鱗にほだされ、居候として同居生活を始める。そんなある日、鱗の伴侶にふさわしくない、と襲撃してきた化け狐に、智治が怪我をさせられ―――。新鋭・日ノ原 巡が描く、龍神×男嫁の異種恋愛譚、心と体が繋がる初夜を描いた第二巻!



[感想]
智治が鱗さんに魅かれる過程とストーリーの展開に無理がなくてすっごく良かった。
初めて体を繋ぐときも、鱗さんが消えてしまわないための行為としてではなく、恋人として触れ合いたいという気持ちで...甘くて色気があるHで大満足。鱗さんの背や腕にウロコが出てる描写も好き。
心が通じ合ったけれど嫁となるために人間を止めるのではなく、契約に縛られず生きる道を探すっていう智治の決心もいいし、幸せそうに笑い合うラストの二人の様子にもほっこり。
天狐のキャラにちょっとしたせつなさを感じて好きだな。甥っ子と天狐はこの先、何か特別な関わり方をしてくるのかな?ということも気になるけれど、幼馴染みの司が何やら意味深に鱗と智治を見ていたのは3巻への伏線だよね?横恋慕な展開だとありきたりで個人的にはテンション下がるかもなぁと思ってるんだけど...どうなるのか気になります。


コヨーテ III / 座裏屋蘭丸

[あらすじ]〈人狼〉であることを隠しながら暮らすコヨーテは、想いを寄せはじめたマレーネが、人狼と敵対しているマフィアの後継者だと知ってしまう。裏切られたと絶望し、彼を拒絶するコヨーテ。しかしマレーネは、一目会おうと単独で人狼の住処に乗り込んで来る。彼を信じたい気持ちと、種族の狭間で揺れるコヨーテだが――。



[感想]
📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp


なのかのむすび / ユキムラ

[あらすじ]かつて尾頭家には猫神の弧君、水槌家には蛇神の一里丸という守り神がいて、百年おきに“七日間の婚姻”という儀式を行っていた。神に選ばれた一輝と桜介は、なりゆきで祝言を挙げることに――…。全部、真似事のはずだった。祝言も、初夜も、接吻も。苦くて甘い縁を描いた、和風プロミス・ラブ!!



[感想]
表紙はどシリアスな印象だけど中身は割と軽いテンションというか......だいぶ印象の温度差があったw メインの一輝が深く考え込まない質なので、深刻な部分もあっさりすっ飛ばす勢いでざくざく問題を乗り越えていって、まるでダイジェスト版を見てるみたいな早回しっぽい展開で、物語に入り込む間も無く終わってしまった。もう少しシリアスに寄るか、複雑な家庭事情の中に居た桜介の心境をクローズアップして欲しかったかなぁ。和風テイストで猫神と蛇神の依代になるという題材はすごく良いし、一輝も桜介もキャラが良かっただけに、大雑把な漫画だったのが残念。


1人と一人の3650日 / hitomi

[あらすじ]10年前に「キモいんだけど」と酷い言葉で自分をフッた勝巳と再会したゲイの牧。純粋に再会を喜ぶけれど、ノンケのはずの勝巳が評判の悪い男とセックスをしていると知る。過去、保身のために牧を傷つけた勝巳は見知らぬ男たちに乱暴に抱かれ、痛めつけられることで赦された心地を得ていた。その事実を知った牧は、勝巳にこう告げる――。「僕が勝巳くんに罰をあげる」hitomi、渾身のデビューコミックス!!


[感想]
悔やんでいる過去を”痛めつけられる”という歪んだ形で受け入れることで、自分を罰している受けの心境はわからないでもない。でもその行為は、自分を憐むために自己犠牲心をこじらせてるだけで、結局のところ自己満足の罪滅ぼしをしていただけのように思える。
そうやって本当の意味で自分の行為とそこに生じる感情を直視していなかった勝巳が、後悔の発端となった牧との再会で牧自身から”罰”と称した肉体関係を与えられ、本当の贖罪と救済を得られたのは王道の流れだけど、丁寧に描かれていたと思う。
ただちょっとストーリーに余白がないというか、描きたい部分をとにかく詰め込んで描いた感じがしたかなぁ。とはいえ、BLでは割とありがちなテーマを真摯に描いていて、絵も好きなタッチなので、今後の作品を期待させられる漫画家さんだと思いました。
短編が1作入っていてそちらも良かったです。


STAYGOLD 5 / 秀良子

[あらすじ]甥っ子(18)→叔父(アラサー)優士、ついに陥落!? お前の見てる世界に俺の居場所はあるんだろうか。中山家を出て、2年ぶりに帰省した駿人はすっかり大人びていた。もうあの頃のように優士に想いをぶつけてはこないし、射抜くような視線も向けてこない…。諦めのような、寂しさのような、煮えきらない気持ちに懊悩とするなか、突然知らされた駿人のアメリカ行きの決意。激しくざわめく心に優士は戸惑い、そして…。「この感情につける名前を俺はまだ――。」離れた心がふたたび交錯する、緊迫の第5巻!

[感想]
幼い菊花も含めて登場する人物全員がそれぞれ自立した精神で生きているからこそ、諦めにも似た聞き分けの良さを自分に対してすら発揮してしまう感じが、どうにもこうにもツラい。
そんな中で唯一と言っていいほど動揺という感情で危うく揺らぐ優士。5巻の優士の心の揺れ具合が圧倒的な真実味を放って展開して、最後のホテルのくだりは、グワっとこっちまで感情が揺れてなんか変な声がのどにつまったw あーーーーここで続くのかーーーーーっ!
4巻読んで正直、駿人×優士よりもコウと日高のその後の方が気になると思ってたけれど、5巻読むとめちゃくちゃ駿人×優士も気になりますw


罪と咎 / 天河藍

[あらすじ]俺は動かない人間にしか興奮しないんだ――愛を知らないサイコパス×人生に絶望した青年狂おしほどの愛憎劇…【特典ペーパー付き!!】 片親で育った昴は、対人依存症の母とその愛人による不当な暴力に耐えながら、家賃を稼ぐために働かされていた。ある日、前借りした給料を愛人に奪われた昴は、追い打ちをかけるように母と愛人が保険金目当てに自分を殺そうとしている会話を聞いてしまう。「俺、なんのために生きてんだろ…」生きる気力を失い、死を望む昴。行動を起こそうとしたその時、見知らぬ男・晃成に、自殺するくらいなら自分のものになるよう迫られる。絶望を前にした昴にとって、それは甘美な誘惑に思えて――

[感想]
「薔薇とヘドロ」と同様に、愛情が希薄な環境で育ったキャラクターと、病んだ執着と愛がテーマになっていて、最終的に二人きりの箱庭の中で相互依存のような幸せを感じて生きていくタイプの話だけど、「薔薇とヘドロ」よりもこの作品の方が攻めと受けが互いに愛という感情を抱くに至った理由はわかりやすかったかな。
暴力と闇と執着の果てに生まれるなんらかの感情や関係性を描くのが性癖の作家さんなのかと思うんだけど、後ろに入ってる短編「片恋トライアングル」みたいな軽いタッチのアホエロ系も描いていたりして...雰囲気の異なる漫画を楽しめる1冊ですw


滅法矢鱈と弱気にキス(1) / 腰乃

[あらすじ]変転童貞α男子高生×ブアイソ処女Ω研修医のDestinyラブ!第二次性別検査で初めてαの結果が出た男子高生・横須賀。両親ともβゆえに驚きと動揺を胸に、義務付けられた国の少子化対策説明会へ出向くと、でかでかと「フィーリングカップルGOGO!!お見合い会場」という文字が踊る看板がお出迎え…!一抹の不安を抱きつつ歩を進めると、そこには可憐で可愛らしい女子Ωちゃんが大勢v 相性の良い娘が見つかったら彼女ができる!?と俄然やる気になって相性診断に臨む横須賀だったが、92%と超レア最高クラスの相性を叩きだしたのは無愛想で目付きの悪い……オトコ?!?!?!?

[感想]
腰乃さんの漫画はいつも読むのにすごく苦労するんだけどやっぱり面白いなぁw
オメガバースものだけど独自設定ありで、基本わちゃわちゃしていながらも、Ωとしての苦悩やβからαになった高校生の戸惑いの部分もちゃんと描いていて、全体のバランスがいい。Ωの静香ちゃんのイケイケgo goな暴走気味の熱烈アタックの根底に、ずっとずっと番を待ち続けていた積年の思いがあるのが愛おしくて、区役所の皆さんが応援したくなる気持ちに共感。
少しずつ距離を縮めて、相手のことを知って、この先どうやって番になるのか...楽しみ。


簡易的パーバートロマンス 3 / 赤原ねぐ(原作:瀬森菜々子)

[あらすじ]「俺……完・全・に鹿嶋のこと好きじゃねえかよ!!」“ドMヤンキー”の鹿嶋幸と、鹿嶋の『顔』が世界一好きな“顔フェチ”の真田亮司。とうとう鹿嶋のことを好きだと自覚してしまった真田だが、今の関係を壊したくないと告白はしないことに決める。しかし、進級したことでクラスが離れ離れになり、二人の関係にも少し変化が訪れ……? 連載時から大好評だったドキドキの修学旅行編も収録! 顔フェチ(不憫)イケメン×ドM(野獣)ヤンキーが繰り広げる、恋愛偏差値“3”ラブコメ、3rdシーズンに突入です!

[感想]
鹿嶋がユキのことを”そういう意味”で意識し始めて挙動不審になり、ユキはユキで心境に変化が...という展開の3巻は、修学旅行というイベントもあり胸キュン度高め。
3巻は初期恋愛感情の動きが多くて、萌えに含み笑いを漏らしてしまう箇所が多かった。一人でぐるぐる赤くなったり青くなったり、嫉妬して硬い態度になったり落ち込んだりする鹿嶋のあたふた感は王道だけど刺さったw 一番刺さったのはユキが鹿嶋の態度に何度かモヤる中で、修学旅行の夕食のバイキングで「まだ途中だろ、バカ」ってつぶやくところ、最高にギュンってきたw
それにしても気持ちの"検証"のために納得いくまで街で殴られるとか、ユキは斜め上行くなーと思ったけど、最後「お前が性癖になったんだと思う」ってw そういう検証結果に至っちゃったかーw あー早く続き読みたいー。


NEVER GOOD ENOUGH 1 / CTK

[あらすじ]「兄にそうしたように俺にも足開いてくれます?」長年付き合っていた恋人に振られたばかりのルイの前に、元恋人の弟・テオが現れた。傷心中にもかかわらず不躾に詮索してくるテオに苛立ち、ルイは「兄を振ったのは俺だ」と嘘を吐く。だが、それをきっかけにテオに付きまとわれるはめに。嘘がバレれば終わる関係。別にそれで構わない。そう思っていたはずが、テオの執着の矛先はいつしかルイへと向かいはじめ――。電子限定描き下ろしマンガ1Pを収録!

[感想]
絵もストーリーも上手いし読んでる時は面白いと思うのに、いまいちグッとこない作家さんだったけれど、これはだいぶ好きかも。といっても完結していないので最終的にどうかはわかりませんが...。ルイ、テオ、ニックのそれぞれの思惑の絡まりがこの先どんなドラマを生むのか、特にテオの兄に対する執着に興味がある。


では、また!
浅葱 拝