きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

「365+1」  凪良ゆう(イラスト:湖水きよ)

[あらすじ]恋人同士の紺と綾野は、上京し共に夢を追うはずだった。けれど母親が倒れ、綾野は地元に残ることに。距離が離れてもふたりの仲は揺らがない、そう思っていた。なのにいつしか綾野は、自分の変わり映えしない日常に焦りを感じ始める。そして、久しぶりに帰省した紺に“変わらずに待っている安心感”を求められたことで、綾野が感じていたふたりの間の亀裂は決定的になり──。(電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]
夢を追うこと × 理想と現実
美容師志望の綾野とスタイリスト志望の紺。高校から専門学校までそれぞれの憧れる業界への情熱を分かち合い、夢を語り合っていたキラキラと輝く青春の先には、現実が待ち受けているわけで…。
専門学校を卒業後は一緒に上京して夢の実現への一歩を踏み出そうと思っていた二人だけど、綾野は地元に残り、紺だけが上京。それぞれの場所で頑張ろうとするけれど。
紺は従兄弟のツテで第一線の仕事に携われるのに不甲斐ない自分に情けなさを募らせるばかり。
綾野は母親が経営する片田舎の美容室でできる限りのことしているけれど、古びた美容室に訪れる大半の客は母親の昔からの常連客で…。

恋人 × 遠距離
恋人になる前から同じファッション業界(スタイリストと美容師って美容業界っていうのが正解なのかな?ちょっとわからんw)に憧れ、青臭いことを大真面目に語り合って、情熱を分け合うみたいに過ごしていた二人。
だから離れても大丈夫。俺たちはわかり合っている。
そう思っていたけれど、物理的に離れ、取り巻く世界が変わり、数年経つ頃に見えてくるものは…自分の不甲斐なさが大きくて...。
紺も綾野もその気持ちを分かち合うことができなくなっていた…。その焦燥、わかるよ...。

「なにも言わなくても通じ合えてるとか、おまえ、夢見る少女かなんかなの?」

美山さんにスタオベ ! !👏🏻👏🏻👏🏻
紺の甘ちゃんっぷりを辛辣にズバズバ指摘するあの部分は胸がスカッとしたわ !
鼻持ちならない見下し感←しかも無自覚。
深いところでつながっているとか言うけど、通じてないから。
って現実をはっきり言葉で指摘されて、はじめて不安を憶える紺は、ずっと綾野に甘えすぎてたよねーーー。綾野視点がメインで読み進んでいたから、紺視点で紺の気持ちがわかっても、ずっと紺には「この野郎ーーー!」って気持ちだったので、この強烈な一撃を喰らわせた美山さんがこの小説の中で一番好きなキャラだったw

「人が見える作品を作ろう」

そのコンセプトに回帰してフェスの作品を作り上げる中で、紺も綾野も互いのことをもう一度、ちゃんと見て、理解していくのがすごく上手く描かれてるんだよ✨
青臭い青春の中にいた紺と綾野ではなくて、上手くいかないことだらけの現実に打ちのめされても前を向いていく”現在”の自分たちをちゃんと見て、理解して、そしてもう一度、自分にとってとても大切な人だと手を取り合う。

復縁ハピエンが既定路線とわかっていても、そこに辿り着くまでをどう描くかでだいぶ評価が分かれると思うけれど、凪良ゆうさんはさすがです✨✨
鬱屈した日々の中の焦りや足掻きがとても現実的で、恋愛 × 仕事 × すれ違い が見事にまとめられてました✨

この小説に出ていたデザイナーの久保田さんと美貌のカリスマモデルで辛辣な毒舌家・美山のスピンオフ「愛しのいばら姫」もあるよ!
Let's ε===((((((((((っ・ω・)っ go!!

「愛しのいばら姫」の感想はこちら✨
blnote.hatenablog.jp



ではまた!
浅葱 拝