きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

「先輩、断じて恋では!」 晴川シンタ

[あらすじ]CGデザイナーとして経験豊富な柳瀬は、新人・金田への教育係になったはいいが、なかなか金田との距離を詰められずにいる。頑張り屋なのは分かるが、表情を全く崩さない上、ちょっとしたスキンシップを図っても「触らないでいただきたいのですが」と拒否されてしまうのだ。落ち込む柳瀬の一方、金田は金田で、柳瀬を持て余していた。実は金田は、「神」と崇めるほどに柳瀬を尊敬していて… ! ? 優秀チャラめな先輩×常に真顔な一途後輩。(電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]

すみません、できるだけ触らないでいただきたいのですが

真面目で仕事熱心な新人・金田からそんな風に言われてどう接したらいいものか…とモヤっているベテラン柳瀬。
実は全てが尊敬に値する神 ! と思っている柳瀬の下で働く金田は、全身全霊で無表情を装いながら盛大にテンパっていたw
もうね、ずんずんスタスタ歩きながら柳瀬と会話したことを思い出して、ドドドドドドドドッと心臓のうねりを轟かせ「うまく喋れん… ! ! 距離感がわからん ! 」と方言丸出しでひとり赤面する金田くんが最高にかわいいかわいいかわいい(*´∀`)

CGが好きなら仕事も楽しいさ

アメリカのアート大学に進学し、カナダのCG会社で3年のキャリを積んでいた柳瀬。バリバリと一線で働いていたけれど、「クライアントの指示以外のことはしなくてもいい、それ以上のことをやっていいものを作ったとしてもそれは自己満足だ」と押さえつけられ、揉めないように過ごすうちに情熱を失って…。
それを挫折と呼ぶかはわからないけれど、感性や才能を最大限に活かす職業に就いていながら、自分は仕事に対する情熱や楽しむことを失った人間だと思いながら働き続けるのは…苦しいだろうなぁ。

お前のそれは恋じゃない

尊敬するあまり柳瀬とまともに話せなかった金田が、新人歓迎会で酔って柳瀬を質問攻めに。同様に酔ってる柳瀬に「お前、俺のこと好きみたいじゃん」と軽口で応じられて一瞬キスされたことから、金田の中の柳瀬を尊敬し敬愛する「好き」の気持ちに揺れが生じて大動揺 !

それでもまっすぐ仕事に打ち込んで、柳瀬への想いにも答えを出そうとする真面目一直線の純情不器用な金田の感情がすごく丁寧に描かれていて、金田を応援したくたなるんだよーーっ !
自分を卑下する感情を思わず吐き出す柳瀬を一喝する場面は、感情的になる余り金田くん方言丸出しw
必死のパッチ(死語?)で「んな訳 ねーべ ! ! ! 」と、半泣きで柳瀬の仕事に対する気持ちを奮い立たせて......金田くん、カッコイイのに可愛いって罪だよ ! !

「金田、この気持ちってなんだろうな」

ちょっとぉーー柳瀬さん、そこでそのセリフの伏線回収するかーーー !
「ずるいです…」
ほんとまったくね ! と金田くんに相槌打ちながら、ほっこりしてにっこりして頬筋ずっと上がりっぱなしだったw
そのあとの金田くんのまっすぐさも眩しくてイイよ✨


というわけで、なんかもう金田くん可愛いばっかり書いててスミマセンw
いや、ビジュアル的には金田くんまったく刺さらないんだけど、ほんと一生懸命でまっすぐにCGの仕事に向き合っていることとか、柳瀬さんのことを心底尊敬しているのを端々から感じさせる表情が上手くて、なんか好きになる✨

だけど柳瀬さんの金田くんに対する「恋愛」的な感情は、あまり描かれていなくて、読んでる側で補完する必要があるかな。
多分、柳瀬さん的には自分から戯れ的にキスしてなんだか金田くんを意識し始めたってところが起点になってるとは思うけど、そのあとの物語としては、柳瀬さんについては恋愛云々よりも、過去と現在で仕事に向き合う部分がメインになっていて、クライマックスの「この気持ちってなんだろうな」ってシーンは、本当に自分の中で明確にはなってなかったんだろうなぁと思った。
だからこそ、カナダでああなるまでの1年間に遠距離でどんな風に気持ちを煮詰めていったのか、そこが気になるんだけど、そこは自己完結しなきゃならんのよ !
CGの仕事のことを詳しく描写することに力が入ってたから、柳瀬さんが金田くんに魅かれる部分を描ききれなかったんだとしたら、ちょっと残念だけど。
あと各話の扉絵のちびキャラが ” それぞれの今の感情は 〜 “ って感じのデフォルメで描かれてて可愛かった✨


ではまた !
浅葱 拝