きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

「盗賊王の溺愛花嫁【特別版】」小中大豆(イラスト:石田要)

[あらすじ]千年の栄華を誇る皇国で神聖な存在・オメガの朱璃は、いずれ皇太子妃となるため育てられた。美貌と教養を磨き、その日を待つ朱璃。けれど突然、二つの悪い知らせが届く。一つは、皇太子妃が別人に決まったこと。そしてもう一つは、盗賊から成り上がり野蛮と噂の烏月国の王・アータシュとの縁談だった。冷酷な男との愛のない政略結婚。覚悟を決め輿入れするが現れたアータシュは「間違いない、お前が運命の番だ」と朱璃を溺愛し──!?
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[感想]

盗賊王

といってもそれは100年以上も昔に野盗の首魁が王だったという歴史を持っているだけで、烏月国の現王であるアータシュは王の資質に溢れ国民から慕われる立派な王。
だけど、朱璃はずっと白星国の皇帝の第一皇子に嫁ぐものだとして育ってきていたので、嫁ぎ先が烏月国のアータシュだと告げられてショック ! しかもずっと慕っていた第一皇子が護衛でベータ性だった男性と婚約して失恋のダブルパンチ !
そんなわけで朱璃は、領土を広げて中原を支配する烏月国が、人質として花嫁の自分を所望したのだと思い、半ば自棄っぱちって感じで受け入れて、蛮国に死にに行くものだと覚悟する...美しいお嬢様のような容姿をしているけれどなかなか苛烈な性格をしてるw
だけど、白星国から烏月国への輿入れに砂漠を越えていく過酷な旅程で、烏月国の世話係に烏月国の言葉で素直に礼を述べたり、旅の途中で自分が死んだら親切にしてくれた世話係や旅の供の者達が罰せられないか心配したりして、烏月国にたどり着くまでの序盤で朱璃の人物像が、気が強くて深窓の令嬢の如く世間知らずな不貞腐れたわがまま花嫁というわけではなく、芯の強さと他者を思いやる心遣いも持ち合わせている部分がちらりとわかる構成になってるのがすごくよかった✨

初夜の儀

文化に乏しい国の野蛮な男の元に嫁ぐのだと死を覚悟する思いで烏月国にやってきた朱璃が、目の前に現れたアータシュを見て想像とは何もかも違うことを知る最初の部分すごく好きだわー✨アータシュの美貌に圧倒され、抗いがたい興味や高揚感を覚えるけれど、まだまだ信用しませんっ!って感じでツンとしたり、熱い視線で口説かれて赤面したり、朱璃のツンデレっぷりが微笑ましくも可愛いw

「初夜の儀」になってもまだアータシュとの会話はあー言えばこう言う感じの皮肉盛り沢山で切り返してて、どこまでも素直になれない跳ねっ返りっぷりがキュート(〃▽〃) でもそれ以上続けてたらツンデレの域を出て単なる偏屈でウザくなるかも…ってところで、「初夜の儀」の初めての交わりが始まるのが萌えーーっ ! 何もかも初めてで戸惑う朱璃と甘く蕩かすアータシュ…萌えーーっ !


運命でなくても、

「初夜の儀」の後、朱璃とアータシュの関係は以前よりもぐっと近づくけれど、アータシュが朱璃に「運命の番」を感じて溺愛する一方で、朱璃は「運命の番」というものがどういうものかわからなくて...それなりに仲良くやっていても心から結ばれてる状態ではないからと、うなじを噛んで番となり子をなすところまでは進まないんだよねーーー ! 「身体を労わるように心も大切にしたい」ってアータシュほんっとスパダリ !

朱璃の心の変化を促す存在としてアータシュの元恋人で現在は軍の大将を務めているシーリーンが登場するんだけど、当て馬じゃないよ ! むしろ朱璃と同じオメガとして良き友人になる人物で、このシーリーンがかなりのナイスガイ! 石田要さんのイラスト付きで美貌っぷりまで完璧✨麗しい...。
いやぁー、朱璃はお世話係のアルマやライラもこのシーリーンもだけど、周囲の人々に恵まれてるなぁ。などと思っていたら、なんと王宮の腐敗した内政を暴こうとしたシーリーンが狙われて、朱璃に命の危機が ! ! !
そこで見せる朱璃のガッツが愛おしい✨



朱璃に「運命の番」を感じて愛していると言うアータシュと、「運命の番」というものがわからなかった朱璃が、一体どんな風に相思相愛になるのか...本編で朱璃が辿り着いた気持ちと、その後の二人を描いた「幸福な庭先で」でアータシュが思い至った気持ちをじっくり噛みしめた甘ーい1冊だった✨

朱璃がツン成分80%ぐらいのツンデレなんだけど、後半になるにつれアータシュに向けるツンは照れ隠しのようなもので、人間性はすごく素直なんだよね。恥ずかしくても素直にできないことをできないと告白したり(馬に乗れないこととか)、苦手な剣術も練習したりして自分に足りないところの努力を惜しまない部分とか、人間的に真っ当な強さを持っているのがすごくいいと思った。
あと王宮特有の陰湿な嫌味とか受けても、いつか嫌味を返すために備忘録をしたためてw『私は根に持つ性格だからな』といきり立ちながら書き終えるとすっきりするwとか、強かというよりも皇子としての意地は絶対に曲げないぞ ! みたいな矜持の表し方が可愛かったw


超余談だけど、朱璃が最初にアータシュを見たとき、畏怖を覚えて恐ろしかったという部分は、十二国記の泰麒が驍宗様と出会ったときのことを思い出して、思わず十二国記の「風の海 迷宮の岸」引っ張り出してきて再読✨からの「魔性の子」&「黄昏の岸 暁の天」を再読✨からの全部読み返したくなって結局全部再読中✨✨✨
十二国記10月の新刊発売がめちゃくちゃ楽しみ❗️

ではまた !
浅葱 拝