きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴6年目。

「夜啼鶯は愛を紡ぐ」 小中大豆(イラスト:yoco)

[あらすじ]オペラ歌手を目指して海外留学した与那覇凛は、己の才能に絶望した時にエリアスと出会う。貴族で実業家の彼は凛を一流のアーティストにし、2人は恋人となる。独特の倫理観を持つエリアスには恋人が複数いて、同性の伴侶までいる。自分だけを愛してほしいが口にできない凛は、歌えなくなったらエリアスに捨てられると思い込み……。不器用な男たちが繰り広げる十年に渡る純愛!!(電子書籍サイトの作品内容より)
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ローエングリンとエリアス

凛はオペラの”白鳥の騎士”ローエングリンに憧れという恋をして、その恋は凛に歌声と人生の進む道を与えたけれど、挫折と絶望も教えた。
エリアスへの恋は、一目惚れという安易な言葉では片づけられない衝動がもたらしたもので、それは凛のすべてを覆い尽くすほどのもので...。
ただでさえ自分に対しても周囲に対しても引き籠りがちな凛が、初めて生身の恋をした相手がエリアスだなんて...恋の始まりから悲壮感を孕んでいて、ぐいぐいと小説の世界に引き寄せられる。

実業家で貴族というバックグラウンドがあるために、パトロンという形で不特定多数の人物と関係を持ち、去る者は追わず求め過ぎる者は遠ざける、というエリアスの貴族特有の博愛主義のような不実さが、嫌悪感を抱かせないようにサラリと上手く描かれているので、それを納得した上で恋人(愛人)の一人となった凛が、苦悩したり悲嘆にくれたりしながらも結局はエリアスを愛すことしかできないという気持ちの袋小路に入り込んでいく様が、本当に上手く描かれている !

本当に欲しいものは、手に入らないから

凛の歌手としての才能を開花させ、必要なものは何でも与えてくれるエリアスから、何か欲しいものはないかと問いかけられても、上手く答えられない凛が唯一欲しいものーーーそれがエリアスからのたった一つの本当の愛だなんてさぁ、ヨーロッパ映画ばりの自滅の香りのするの恋愛なわけよ...。
表立って嫉妬することすらできなくて、エリアスへの気持ちが屈折していきながらも最後の最後まで愛を貫こうとし続けた凛が、仕事もプライベートもぐちゃぐちゃにしてしまって、すべてを捨てて帰国する部分はすごくつらい。でもあの流れの、凛の感情の爆発からの失意と、収束していく現実を粛々と描く対比がすごく好き。

愛の違い

ようやくそれぞれの抱えていた想いを語り合えたのは、完全に別れて2年経ってから.....離れた時間があったからこそなんだよね。
猜疑心や嫉妬の感情の渦に飲み込まれ、愛を失う恐れから自分をコントロールすることが難しくなっていた昔の凛だったら、きっと同じ話をしたとしても凛はエリアスの言葉を信じられなかっただろうし、エリアスは凛が去ったからこそ凛への愛の存在の大切さが身に染みたわけだし。
凛のエリアスへの愛と、エリアスの凛への愛は違う形をしていたけれど、愛の形に違いがあるのは当たり前のことで、心を通わせたことがなかったことが問題だった凛とエリアス。もがいた7年の愛の真実がせつない。


すべてを捨てたはずなのにエリアスへの気持ちだけは消えなかった、というくだりはもちろん期待通り !
そこからどうやって再びめぐり逢うのか...というところで、オペラ”ローエングリン”とミヒャエルへの劣等感を上手く消化していて二重丸◎
凛が不義理をして一方的に関係を絶ったイーサンの機転にも感謝だよね。イーサンはこの小説の中で最も人間的にできた人だった。

凛が日本に帰国したあと、エリアスの愛を失った時に歌を歌っていた自分も死んでしまって、歌いたいという気持ちを失ったという凛の変化の部分については、正直かなりモヤっとしながら残り少ないページをめくってたんだけど......最後の最後にそうきたか ! ! !
まさに歌で愛を紡ぐ美しいラストでした✨


いやぁ、小中大豆さんは軽めのタッチで明るい小説が多い印象なので、ここまでがっつり沈み込む恋愛小説ですごく驚いた。わたし的には割と小中さんの小説は購入しているつもりなんだけど、本作のようなタイプの作品は他に読んだ記憶ないです。
今のBL小説の流行とはかけ離れているタイプの小説かもしれないけれど......もっとこういう路線の小説書いて欲しいなぁ。


ではまた !
浅葱 拝

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