きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

「神の飼育 ―真白き神の恋ー」 沙野風結子(イラスト:座裏屋蘭丸)

[あらすじ]天の浮き島に住む長命な天人の桐羽は、人間に騙され「神」として地上に囚われた。神は国の宗主と「契り」を結びその身を明け渡さなければならず、歴代の宗主に慰み者にされてきた。今また代替わりすることになるが、新しい宗主に起ったのは桐羽が最も敬遠する男――軍の最高統括者である敷島だった。傲岸で冷徹な敷島は冷ややかな視線で桐羽を無下に扱う。そして敷島に対し反抗的な態度の桐羽は、触手を操るおぞましい淫具で苛まれることになり――。(電子書籍サイトの作品内容より)【イラスト付き】
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[感想]

偶像としての神

国境を接する三つの大国に導入された「神制度」によって、百年の平和を維持してきた輝土国、ノイエ国、ガラ国。
それぞれの国に「偶像としての神」が置かれていて、輝土国の桐羽は寿命が長い天人という種族の人間でありながら、「神制度」が発案された百年前から輝土国に囚われ「神」と祀られて、代々の宗主に慰み者にされているわけなんだけど、百年を過ごすうちに桐羽は自分の置かれている立場に諦めの境地で、飛ぶことも忘れ、ただ時が過ぎ行くままに生きてる寂寥感がね...猛烈に魅力を放ってます。
「神制度」を発案した賢主によって囚われた過去が徐々に明らかになる過程で、その寂寥感に未亡人的色香まで纏っていって......美しさは罪の某ED曲が流れ出すような耽美さまでも感じさせるなんて...さすが沙野風結子さん✨

お前は神などではない

現宗主が死去して代替わりの宗主になった軍の最高統括者である敷島は、国の行く末を見据えていて、「神制度」をなくして国を立て直したいと考えているため、桐羽に対して剣呑とした態度で接してきて厳しい言葉を投げ打ってくるんだけど、桐羽にとってその言葉や国に対する理念は考えさせられるものばかり。
特に「お前は神などではなく”神”という道具だ」と突き付けられた言葉は、種族の違う地上人の平和のために幽閉され続けてきた桐羽の百年の悔しさに火を点けて、桐羽は自分が何者であるかを自分に証明するために、忘れていた天人としての”飛翔”の練習を再開するんだけど、そういう強さも隠し持ってる桐羽、やはり美しい...。あとでわかる事だけど、囚われの身になる前の桐羽は活発で好奇心旺盛な子だったという事だから、百年もの年月閉じ込められていても根っこの部分は失われていなかったんだよね。

殺すぐらいなら解放したい。

桐羽も敷島も反目しているのに、互いの存在に心がかき乱されていく部分が小説の主軸になっていて、控えめに言ってもめちゃくちゃ萌えます!
特に国内巡行のくだりは二人の気持ちがグッと近づいて、互いを意識しまくって...。
国のためには「神」である桐羽を殺さなければならないと決心していた敷島が、どうしても桐羽に手をかけることができなくて、わざと二人を物理的に繋いでいた腰紐をほどいて、桐羽に逃げ出すチャンスを作ってあげるところなんて、もうもうもうっ ! それに気づいた桐羽が生まれ故郷の天の浮島ではなく敷島のもとへ走って追いつき、ほどけた腰紐を敷島の左手首に結びつけて...もうもうもうっっ !  この萌えどうしてくれようかって悶えました... ! ! ! !
その流れから初めて二人で身体を交わすところは...座裏屋蘭丸さんの挿絵と合わせて最っっ高です✨

"飛翔"をただ与えられるのではなく、自分で獲得したものを尊いと感じるのです

桐羽が子供の頃から見守っていた前宗主の息子の春日に向けたこの言葉は、「神制度」という偶像で保ってきた平和をこの先も延長させるのではなく、現状への危惧を踏まえた上で自分たち(輝土国民)の力で築いていかなければならないものだ、という国の在り方にも通ずるものなんですよね。
桐羽は敷島との関係を通してその事を身を以て知ったわけだけど、春日は...。
ずっと桐羽を慕っていたので、春日は次の宗主になって桐羽を手にするのは自分だけだという執拗な執着心を間違った方向に強めてしまい......。

陥れられた敷島と、決死の覚悟で彼を救った桐羽の逃亡の数日間に、またもや萌えが凝縮されてて滾ります...❗️もうこの二人、尊すぎる...✨
その逃亡中に、輝土国に切迫した危機が訪れている事を知り軍の前線に戻る敷島と、央都に戻る桐羽。そして春日の愚かさを許し、国を守って...ハッピーエンドーーーではないんだよね...。そこから国を建て直し変革していくためには、やはり「百年の偽りの神」そのものを消去するしかなく、桐羽は天の浮島へと戻ることに...。



敷島と桐羽の二人だけで天通山を登る別れの日や、エピローグの始まりは、つらさの方が先に立ってしまうかもしれないけれど、最後まで見届ける価値のある終幕です。

あらすじからだと触手や調教ものかと思うけれど、純愛ものです✨触手や調教方面で期待している人には、そういうプレイがメインではないので確実に物足りないと思う。ただキュン死しそうなくらいの純愛っぷり✨✨で最高に素敵だった✨
そして表紙を含めて座裏屋蘭丸さんのイラストが素晴らしさの極みだった✨✨✨✨

個人的好みですが、沙野風結子さんの小説の中でも、国の在り方を背負った相容れない二人が抗いながらも惹かれていく小説系は本当にハズレなし❗️❗️❗️「帝は獣王に降嫁する」「黒帝は穢れた魔物に愛される」「神子は奴隷王に繋がれる」のワダツミ国三皇子シリーズ然り、「神の囲い人 」然り。ふわふわほっこりのファンタジー系ではないファンタジー小説がお嫌いでなければ絶賛お薦め致します。


ちなみにこちらは < 神の触手三部作 > ということで、本作「神の飼育 ―真白き神の恋―」 のあとに、「神の落淫―黒豹国主と新たな神―」と「神の聖婚-機械仕掛けの神と復讐者」というタイトルで独立した連作小説がシリーズ出版されています。
イラストは1作目が座裏屋蘭丸さん、2作目はCielさん、3作目は笠井あゆみさんとなっています✨豪華ですね✨✨✨

3作目の「神の聖婚」がずっと電子書籍になってなくて、🤔( ガッシュ文庫って休刊になったよな?...ってことは3作目だけ電子配信なしなのか? )と凹みつつ紙で購入することを検討してたところに、ガッシュ文庫の新刊電子配信きましたーー!!
電子書籍でシリーズそろえられて感謝ー!


hontaさんでは1作目の「神の飼育 ―真白き神の恋ー 」が今なら( 10/3まで) 30%Off になってるみたいです✨
【期間限定価格】神の飼育―真白き神の恋―【イラスト入り】税込476(2019/09/25時点)

ではまた!
浅葱 拝