きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

悪辣色男 / 中原一也(イラスト:奈良千春)

悪辣色男 / 中原一也(イラスト:奈良千春

[あらすじ]堅実な就職先、型どおりの結婚。今まで常識的に生きてきた川崎は、ある事情から会社をリストラされてしまった。川崎は躊躇(ためら)いつつも、男ばかりが集う高級クラブに再就職する。オーナーの鮎川の「身を売る必要はない」という言葉を信じたのだ。 だが、地味で冴えない川崎にやっとついた指名客が求めたこととは……!? 「本当は、嫁さんにねだられなくなってホッとしてるんじゃないのか? 女なんか嫌いなんだろう?」 川崎のついた「嘘」を知っているかのように、川崎を脅し、追いつめてくる鮎川。黒い魅力に、秘められた願望は暴かれていく――!!


[感想]
型通りに生きてきた川崎の人生に、忘れたくても忘れられない記憶を植え付けた少年との過去話が、直接的な性行為はないのに危うげで妖しい雰囲気でいいねぇ。
小出しにされる過去話と現在を交互する構成なので、その少年の正体はすぐに想像がつくけれど、心理的に相手をいたぶって、翻弄して追い詰めていく鮎川の性癖と、鮎川の川崎に対する執着と独占欲がこの二人の関係のずっと根底に絡みついてて、どんな手を使っても川崎を囲い込み、追い込んでいく鮎川の執拗さにすごく色気を感じる。
ただ川崎が自分でも気づいていなかった(無意識に気づかないようにしていた)隠された自分の本性に気づかされて暴かれていく部分は、ぼんやりとしてるというか、物足りないかなぁ。最後の最後もちょっと駆け足だったと思う。
中原一也さんの描く大人の男性の色気......素敵。


では、また!
浅葱 拝