きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

僕等に名前をつけるなら (上・下) あがた愛

[あらすじ]高校3年の春、遠坂和泉は弟・矢野馨と再会した。両親の離婚で離ればなれになって7年、寮の相部屋で再び一緒に生活することに。低くなった声、赤く染まった髪、大人びた表情、知らない名字……何もかも変わってしまった彼に最初は弟だと気づかず惹かれていく和泉。兄弟同士のはずなのに、胸に芽生えたこの感情は…?(電子書籍サイトの作品内容・上巻より)
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[感想]

兄弟BL

兄弟BL好きなんですよ......義兄弟ものも、実の兄弟ものも、どっちも好き。
禁忌の泥沼に重く沈み込んで身動きが取れなくなるような鬱系や、執着するあまりに兄弟以外の存在を捨て去ったり破壊したりする病み系もいいし、相手を監禁して二人きりの世界で雁字搦めの狂気系もいいし、逆に優しいハッピーエンドもいい。兄弟BLの可能性って無限大
私はハッピーエンドガチ勢ってわけじゃないのでバッドエンドもいいと思ってる。もちろんハッピーエンドも好きだ✨
この「僕等に名前をつけるなら」は優しいハッピーエンド系で、実の兄弟同士の背徳感はあまりなくて全体的に甘い仕上がりです。

離れ離れになって7年

兄弟同士の背徳感があまりないのは、子供の頃に両親の離婚で離れ離れになって一緒に暮らしてきてないからっていうのもあるかな。
最初から兄の和泉のことを想って同じ高校に入学してきた馨と、最初は弟だと気づかずに薫に魅かれた和泉。最初の再会の時に「弟の馨だよ」って言われてたら、和泉は弟に恋したのかなぁ。弟だと自覚する前に好きになってしまったから、恋する気持ちを抑えられなくなった部分もあると思うんだよね。

兄弟、先輩後輩、好きな人......

兄弟じゃない意味で好きだと告白してきた馨だけど、時々、和泉に対して兄弟としての優しさや喜びを見せたりするとことか、兄弟って絆は理屈じゃない部分で切っても切り離せないってところをちゃんと描いていて好き✨そのたびに揺れる和泉の戸惑いや心の動きもよくわかる。馨の告白を突っぱねたけれど、どう見ても和泉は馨に魅かれる気持ちを止められずに、兄弟でいようと無理やり自分を納得させてる感じ。もどかしいけど、そこがいい。


上下巻ともに和泉と馨の心境の変化を丁寧に描くことに注視しているので、馨に絡んでくる女子とか和泉の元彼とか登場するけれど、存在感としてはモブ以上脇キャラ以下ぐらい。母親とのシーンもさらっとしていて、唯一、あそこの母親の心境はどんなものだったのか少し気になったかな。けれど、テーマを広げ過ぎずに兄弟の気持ちを上手くまとめ上げられてた✨

Hシーンはほぐして挿入という感じでバリエーションはないんだけど、修正が甘めなのとシモの縮れ毛(攻めの)まで描写するところなんか、 綺麗系の絵柄のBLで毛まで描いてるなんて、いつもおぉ〜っっと感嘆w


あがた愛さんは単行本の「ピアスホールは塞げない」は収録作も含めて割と好きだったんだけど、「僕は君のいいなり」がまったくと言うほど合わなくて、 今回の新刊も顔赤らめてる表紙がちょっとキモい...とか思って(ごめんなさい...w)買うか買うまいか迷ったんだけど、買ってよかったです、ほんと✨
あがた愛さんの作品の中でダントツでこれが好きだな。兄弟BLの良作で何度も読み返したくなる。

ではまた !
浅葱 拝