きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

我が王と賢者が囁く / 飯田実樹(イラスト:蓮川愛)

9月の幻冬舎フェアで購入したBL小説(全11冊)から「我が王と賢者が囁く」です✨
手違いでまとめ記事消しちゃって再掲…泣

我が王と賢者が囁く / 飯田実樹(イラスト:蓮川愛

[あらすじ]美しい容姿と並外れた魔力を併せ持つ聖職者リーブは、その実力から若くして次期聖職者の最高位「大聖官」にとの呼び声高い大魔導師。聖地を統べる者として自覚を持つよう言われるが、自由を愛するが故、聖教会を抜け出し放浪することをやめられずにいた。きっとこれが最後だろうと覚悟しながらも三度目の旅に出たリーブは、その道中で「精霊の回廊」と呼ばれる時空の歪みに巻き込まれ遠い南の島国シークにトリップしてしまう。飛ばされた先で出会ったのは、シークを統べる若く精悍な王バード。彼は星詠みに予言された運命の伴侶「白き宝珠」が現われるのを長年待っているといい、リーブがまさにその宝珠だと情熱的に求婚してきて――?南国を統べる覇王と大魔導師、運命に導かれた二人の異世界婚礼ファンタジー! 電子限定書き下ろしSSを収録!!【イラスト付き】
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[感想]

キャラクターは魅力的。特に受けのリーブが美女と見紛うような美しい容姿の神官でありながら、放浪癖のせいで度々教会を抜け出してひとり旅にでるアグレッシブな性格で、あまり深刻に物事を考えない楽天家のところは、こういう神官受けにしては珍しくて新鮮。
攻めのバードもシークの民として王としての矜持を強烈に放つ一方で、リーブへの愛の表し方など、雄々しいキャラだけど初々しい部分を隠さない実直さを持ってていいと思う。

ただガルボスが攻めてきて、この小説のキモの部分の「シーク国史上、最大の苦難と危機を迎えることになる」という最大の山場がやってきたのに、軽くさっさと解決したり、もう一つのキモの部分の子供のときに見ていた夢について、なんら言及なく放置されたままっていうのが......。
リーブが「カリフの民の生き残り」と思わせぶりな情報を出しておいて投げっぱなしにしたのは、リーブの出生の秘密を含めた次巻への布石だからこの1冊の中では明かさなかったのかもしれないな、と思えるけれど、上の2点(国の最大の危機と子供の頃の夢)については少なくともこの1巻のテーマなんだから、もっと扱いようがあったと思う。

作家様の自サイトからの大幅改稿作品ということだけど、2巻が出るか出ないかわからないでこの1冊を出すなら、そこの構成も変えて改稿した方がよかったじゃないかと…...結局書きたいことだけ書いて楽しんだ同人誌って印象になってしまって勿体なかった。

では、また !

浅葱 拝