きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

チェンジリング~妖精は禁断の実を冥王に捧げる~ / 沙野風結子(イラスト:奈良千春)

チェンジリング~妖精は禁断の実を冥王に捧げる~ / 沙野風結子(イラスト:奈良千春

[あらすじ]
「触れてはいけない。私を抱けば、あなたはまたつらい目にあってしまう」「お前の災いの予言ごと俺が背負ってやる」
妖精の取り替え子・ルカは「災いの預言者」と皆に疎まれていた。その力を妖精王に消してもらうため、唯一の友達・ゼインの手を借りるが、そのせいで彼は追放されてしまう。11年後、ルカは海賊となったゼインと再会する。彼に過酷な運命をもたらすことになる、ある使命を胸に。だが、ルカを恨むゼインにいたぶられるも、秘めていた恋情は募り、使命を果たす決心が揺らいでいく。そして、その時はきて!? 二人がひとつになるとき、妖精界、人間界の命運を呑み込む大きな海流が動き始める――。【特別版/書籍発売時、一部書店用に書き下ろされた番外編を追加収録!】
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[感想]
アイルランドの伝承である妖精と人間の取り替え子(チェンジリング)というテーマを上手く用いて、沙野風結子さんらしい世界観をこれでもかというほど展開していて面白かった。初見で読んだ時は少し乱雑な印象を持ったけれど、自分の中で整理しながら読み進めると、より確かな物語性を感じられる作品だった。
ことの発端となる子供の頃のエピソードの描き方がしっかりしているから、ゼインとルカが抱えて生きてきた心の慟哭が、11年後の二人の言動に見て取れてとても読み応えがある。ゼインのカリスマ性も、ルカの芯の強さと一途な想いも良かった。
二人の旅路はまだ途中......ということで、シリーズ化されるみたいですね。ゼインとルカのBL的な結びつきも気になるけれど、壮大な世界で闇に飲み込まれない強さを持った二人の躍動がとても楽しみ。


では、また!
浅葱 拝