きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

寡黙な華 / 榎田尤利(イラスト:雪舟薫)

寡黙な華 / 榎田尤利(イラスト:雪舟薫)

[あらすじ]「では、接吻の作法を教えてやろう」櫻林院侯爵家の跡取り候補として、三峯邦彦は櫻林院家を訪れる。そこで、数年ぶりに従兄の千早の姿をみつける。幼い頃は実の弟のように千早に可愛がってもらった。だが、いつしかふっつりと千早は人前から姿を消していたのだ。なぜ嫡男である千早が家督を継がないのか? 疑問を胸に抱きつつも、邦彦は櫻林院家を我がものにすると堅く心に決めていた。爵位や財産がほしいわけではない、だが、どうしても手に入れたいものがあったのだ!
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[感想]
昭和初期の伯爵家を舞台としているのでその時代独特の雰囲気でまとめられていて、魚住くんシリーズとも交渉人シリーズともまったく異なる静かでどこか少し陰鬱な耽美を感じさせる。狂気めいた愛を抱いている執着攻めと、子供の頃のトラウマから対人関係を結べなくなった深窓の令息という組み合わせがぴったりとハマっていた。
邦彦がたった一言、愛を言葉にしていたら、千早はあんなに翻弄されず、勘違いで苦しむこともなく、結果として酷い目に合うこともなかったのに......と思うと、邦彦の独善的で思い上がりにも似た愛と、高慢な態度の裏に隠された臆病さに物凄く腹が立つ。
幼少期に千早が遭遇した出来事はありきたりに性的被害かと思っていたけれど、そうしなかった辺りもきちんと伏線になっていて、それが良かった。全体的に出来事の大小に関わらず引き起こされるキャラクターの行動がよく考えられていたと思う。最後をハッピーエンドに持って行ったのは、千早の心ひとつで決まった力技という気がするけれどw
こういうテイストの榎田尤利さんの作品、最近ではあまりないよね......。もっと読みたい......。


では、また!
浅葱 拝

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