きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

ニャンダフルライフ / 越水いち(イラスト:ミドリノエバ)

[あらすじ]猫を助け交通事故に遭った実弥央は、気づくと猫になっていた。雨に降られ寒さに震える実弥央を保護したのは、アパートの隣に住むイケメン警察官で片想い相手の龍崎だった。猫になったのは天邪鬼すぎる実弥央の願いを猫神様が叶えたからで、7日以内に実弥央だと気づいた上で名前を呼ばれれば人間に戻るという。実弥央は添い寝したりキスしたり、龍崎に甘やかされまくりの猫ライフをしばらく楽しむことにしたが……。ミドリノエバ先生の口絵・挿絵も収録。(あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)




[感想]
気持ちとは裏腹のキツい言葉を投げた後、心の中で「もっとああしてれば……もっと違う言い方があったのに......」と凹んで次こそは……!と思うのに、何度も同じ鉄を踏むツンデレのツン成分90%ぐらいの不器用極まりない受けの実弥央がいいキャラしてる。
片想いの相手である隣人の警察官・龍崎と顔見知りになり、ツンデレ返しだけど会話を交わすようになり、初めて一緒に出かける約束を......というところで、まさかの猫に。
とんだアクシデントに見舞われた実弥央だけど、7日以内に人間に戻れる方法を知り、どこまでも素直になれない人間の自分よりも、喋れない分だけ素直に甘えたりできる猫の姿の方がちょっと楽しいし、ギリギリまでネコライフを満喫しちゃえーってなるところとか、ツン対応してしまう自分へのフラストレーションも垣間見えて、人間味あふれてて憎めない。

人間だったらできない距離感で龍崎の生活に入り込み、猫として龍崎といちゃこらした生活を楽しんで、このまま7日間、ニャンダフルライフを満喫......で終わるわけがないですよね〜。
龍崎の女友達が登場して失恋めいた気持ちになって沈み込むのはBLセオリーだけど、7日間で人間に戻れるはずが、実は徐々に人間としての感覚を失っていて、実際に人間としての大切な感覚を失い始めていたあとにそれに気づくという構成、すごくいいです。
ロン以外の猫と意志の疎通ができたのは、キジトラが特別な猫だったのではなく、実弥央の魂が人間より猫に寄り始めていたという伏線だったんだよね。龍崎の言葉が部分的に聞き取れなかったりしたのも、動揺してるシチュエーションと上手く被せた伏線だったと思う。
猫神様の施しで猫になったけれど、それが猫らしく気まぐれ要素で......という事や、ロンの悪気は全くない中途半端な忠告とか、猫の性質を上手く扱って取り込んでます。

龍崎と実弥央が両片想いなのは読者にはバレバレだったけれど、本人たちは気づいていなくて、猫の実弥央の目を通して龍崎のモヤモヤを見てジレジレして、実弥央も龍崎も互いの友達に嫉妬して......という鉄板ネタも盛り込んでてナイス。

「猫が実弥央だと気づいた上で名前を呼ばれれば人間に戻る」という法則を、一旦、猫耳しっぽ付きの実弥央とのHに繋げて見せるのも萌え。
気持ちが通じ合ってからのHは、龍崎が実弥央をねちっこくねちっこく攻めてイカせて......普段よりもグッと男臭い一面と色気のあるSっ気を発揮してて、龍崎さんそんなキャラだったのっwて驚きが。


軽快なテンポで進みながら、読んでいて”おいしい”と思うポイントを外さない良作でした。
(でも失踪中の言い訳はあれで良かった...のか?......特に会社は納得したのだろうかw )

越水いちさんの小説は初読みだったんですが、他の作品も購入しようかな。


ではまた!
浅葱 拝