きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴6年目。

薔薇色じゃない / 凪良ゆう(イラスト:奈良千春)

[あらすじ]出会ってすぐに恋に落ちた水野と阿久津。大学卒業後、同棲を始めるが、会社員となった阿久津とフードスタイリスト修行中の水野は少しずつすれ違い、水野がふと漏らした一言が決定打となり別れる。一年後、再会したふたりは友人としての関係を築くのだが? (電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]

人生は薔薇色じゃない。

仕事も恋愛も友人関係も家族関係も、人生の何事にも理想や望みはあるけれど、すべてが自分の思い描いた通りになるわけもなく、むしろ誰しもが妥協しながら理想と折り合いをつけて生きていて、それが苦しくもあり避けられない現実でもあり。......人生の歩みを通してそういう現実とどんな風に向き合い、受け入れていくのかーーー。
というのを、阿久津と水野というカップルの出逢いと別れからの15年を通して描いた1作。

凪良ゆうさんの過去作「365+1」でも、主人公が仕事と恋愛+理想と現実を前に揺れながら、人生を見定めていく過程を描いていたけれど、本作は主人公達の人生の15年という長い期間にフォーカスを当てて切り取っているので、よりシビアで綺麗事ではない現実となっています。

人生のいくつもの分岐点

ちょっとした些細な事から大きな決断まで、人生や生活の中にはいくつもの選択肢があって、それをどんなタイミングでどんな気持ちの時に選択するかによって、人生の進む方向は変わっていくわけだけど、目の前にある出来事だけを選択の判断材料にしていた若さ(若い時期)から、年を重ねるほどに選択肢の先にあるものを色々と考えてしまって、憂慮や後悔や未練などの感情がごちゃ混ぜになる感じがとてもリアル。

自分の意思で選択したことであっても、選択肢の先が人生においてプラスになるかはその場ではわかるわけもなく、数年経ってから「あぁ、選択肢を見誤った」と思うこともあり、その当時の自分にはわかりえなかったことが年を重ねることでわかることもある、という非常に現実的な挫折感を感じる阿久津や水野の感情を見ていると身につまされる。

阿久津について

作中では「亭主関白のよう」と語られていたけれど、亭主関白というよりはいつも自分本位で物事を見ていて、その結果、水野と対等だと思っているけれど、実際にはそうではない感じになってしまっているように見えるかな。
その自分本位の部分がイコール阿久津の育ってきた家庭環境という部分で、そこが阿久津の亭主関白的なアイデンティティの根幹を形成しているのは理解できるんだけど、それを母親、水野、妻に対しての立ち回りの理由とするのは......とことん自分本位で自分勝手だよね、それは都合のいい逃げ口上だよね、と思ってしまいます。

全体を通して自立した人間のわりに考えが甘くて自分本位すぎる阿久津には、自分にとって都合のいい展開ばかりが待っているほど人生は甘くないっていうことを骨の髄までわからせてやりたいイライライライライラ...と思いながら、阿久津パートを読んでイラつきを募らせた次第ですw

水野について

水野のパートは、仕事面でステップアップしていくのと並行して、移ろう感情の幅が広く描かれているのでとてももどかしい。もどかしいけれど、水野には水野の人生があって、もちろんプライドがあって、プライドがある分だけ意固地になる部分もあるし、恋愛に対する打算も憶えて、水野は水野で決して綺麗事だけで生きてる訳ではないのがとてもいい。
結局のところ水野は傷ついた記憶が重すぎて、「もう一度」という壁を自分からは乗り越えようとは思わなかったけれど、ずっと阿久津のことが好きだったんだよね。


出逢いから別れ、別れから再会、再会からの人生の「薔薇色じゃない」道のりを、じっくりと描いていて、水野と阿久津それぞれのパートで、それぞれの心情が語られながら、人生に対する煩悶が納得できる部分もあれば、どうなのかなと思う部分もあり......読み手側の年齢、環境等々によって、受け取り方もだいぶ変わりそう。
いろんな人の感想を知りたくなる小説です。

ちなみに電子版はイラストなしで1,324円でこの値段ならイラストつけて欲しいわと思ったけれど、紙の書籍だと1,540円......そうか四六判なのねこれ。


ではまた!
浅葱 拝
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