Release / 月村奎(イラスト:松尾マアタ)
[あらすじ]有名企業に就職したものの、仕事がうまくいっていない安西。 恋人にも振られ、気分転換に出席した地元の同窓会で、安西の過去の秘密を知る奥村と再会する。安西が仕事で大失敗をした翌週末、その奥村から電話があり、会社を辞めて彼の喫茶店を手伝わないかと誘われる。 さらに奥村が、ある忌まわしい写真の存在を仄めかしたことから、安西は地元に戻ることになるのだが……?再会から始まる解放の恋物語、ついに復活。(電子書籍サイトの作品内容より)
[感想]
喫茶店のマスター奥村×トラウマ持ちの安西という元同級生の2人の話と、その友人の男女CPの話で構成されてます。
教師から猥褻行為を強要されていた過去のトラウマに囚われ、自分を否定的に捉えることしかできないという安西の心情はわかるけれど、あまりにも流されやすくて自虐的で、彼の過去の苦しみや葛藤に共感する以前に人間として未熟すぎる(浅すぎる)という印象が先行してしまうので、読んでいてイライラした。
(月村さんの自虐的な受けキャラはだいたい好きなのにこの安西に関しては好きになれず。)
なので、そんな安西に対して奥村が、荒療治(脅しという発破)を仕掛けたことは、安西をただただ大事に包み込んで過去の心傷から守るということよりも、安西自身が自分の過去と向き合い、自分を受け入れて自立しなければなんの意味も無いと考えての行為だったわけで、脅しという手段は別として、本当に安西のことを大切にしたいという気持ちの裏返しだったんだなぁと思う。
そのきっかけから、安西が自分を見つめ直し、過去から解放されて自分を受け入れていった過程は定番だけど、きちんとまとめられていてよかった。
ただ、友人の男女CPの女性キャラがとても不快。
子供を産めないから好きな人と結婚できないと悲劇のヒロインぶっていたのも痛いけれど、結局は妊娠して彼と幸せになりますって…特に書き下ろしが本当に蛇足。
わざわざ男女CPの話を盛り込んで大々的に展開しているので、自分の過去が重荷となっている2人の登場人物が、それぞれ自分を受けれ解放する過程を絡ませることで、物語としてふくらみを持たせたかったのかもしれないけれど、女性のウザさだけが悪目立ちしていた。
BLに女性キャラや男女CPが出ばる話は全然気にならないけれど、この小説に限っては女性キャラに関して肯定要素がなかった。
では、また!
浅葱 拝