きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

獣人アルファと恋の迷宮 / 成瀬かの(イラスト:央川みはら)

[あらすじ]養い親を亡くし孤児シシィは迷宮都市へとやってくる。二十人もいる幼い弟たちを養うため、死に神のように禍々しい姿をしたオメガ嫌いの獣人・ラージャと組んで迷宮へと潜り始めたシシィはベータだと思っていたのに突然発情期に襲われ驚愕。激怒したラージャに嘘つきと責められた挙げ句激しく抱かれ妊娠してしまう。一人で子供を産む決意をするも、気づいたラージャが求婚してきて──。プロポーズは子供ができたから? それとも……?(電子書籍サイトの作品内容より)

[感想]

ダンジョン設定のファンタジー

BLのファンタジーでダンジョンものって珍しい!
冒険者ランク初心者のシシィが装備を調えたり、実はチートな魔法の力を備えていたり、ワクワクする冒険ファンタジーの序盤はすごく楽しかった。...んだけど、割と早いうちに受けのシシィにΩの発情期が来て、αのラージャと地下の迷宮でくんずほぐれつのまぐわいエロに突入してあっさり妊娠...。うん、ストーリーのメインはダンジョン攻略じゃなくてオメガバースの恋愛だから仕方ないよね...とわかりつつも、もっと冒険ファンタジーの部分を読みたかったのが本音(´-ω-`)

βと思っていたけれどΩだった

ダンジョン探索の相棒として信頼が生まれ始めていたシシィとラージャだったけれど、地下迷宮でβだと思っていたシシィに発情期が...。Ωとαが発情期に二人きり...ということでフェロモンに抗えず身体を重ね重ね重ねまくる二人。
その後、シシィが妊娠していることに気付いてからは恋愛感情メインに物語がシフト。
Ωの発情に陥れられたという誤解からすれ違う二人のパートと、ラージャが幼少の頃に婚約した少女の存在...という二本立てのすれ違いが上手い具合に絡まって、だいぶジレジレ展開。ちょっと間延び感を感じるけれど、ラージャの無骨で不器用な恋愛感情いいね。

家族となって支え合う

獣人の幼児達はただただ可愛いちびっ子ではなく、いい意味で一筋縄ではいかないしたたかさ持って生きていて、だいぶ逞しさを感じるけれど意地汚いと感じさせるような逞しさじゃない辺りが好感。でも幼い感を演出するための平仮名だけのセリフ(会話)は...読みにくかったw

孤児として強く生きて来たけれど、ラージャと出逢って家族になったことで重荷を下ろしたような気持ちになったというシシィのモノローグは、穏やかな未来を感じさせるものでした。
あと、ラージャの正体が「迷宮都市の覇者」という通り名のダブル・ミーニングになっているさり気なさも良かったです。


ダンジョン探索の冒険者としてのラージャとシシィの相棒感が良かっただけに、オメガバースのありがち展開からの家族エンドに落ち着いたのはちょっともったいないと思ったけれど...おもしろかったです!

では、また!
浅葱 拝