きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

恋のはなし / 斑目ヒロ

[あらすじ]美貌のバーテンでゲイのちひろは、誰からも本命扱いされないダメな恋ばかりを繰り返していた。そんなある日、かつて好きだった高校時代の同級生・律と再会し、恋人との幸せそうな姿をうらやましく思うようになる。やがて足しげく店に通ってくれる律に、あるほの暗い執着を持ちはじめ――。(電子書籍サイトの作品内容より)(ウェブ・マガジン:花丸漫画Vol.15に収録されている漫画のバラ売り短編。)


[感想]

自分が幸せでないから、他人の幸せが羨ましくて......欲しくなる。

過去に告白してくれた同級生との再会で、青春の1ページのような淡い恋を思い出した延長線上に、そんな歪んだ気持ちを抱かせ、罪悪感もなく欲しいものを手に入れようとするちひろという人物の策略めいた駆け引きを「恋のはなし」とした斑目ヒロさんのセンスを感じる短編。

高校時代のおぼろげな告白を、一方的で残酷な身勝手さでジリジリと燃やして、誠実な人間にしか見えなかった律と共に、人間のズルさを凝縮したような結末に流れていく展開がものすごく好き。

ちひろは律の幸せが羨ましかったのに、律を自分のものにしたからといって幸せになろうとは思っていないところが最高に病んでいて、この混濁した美しさ斑目ヒロさんの作品の魅力なんだよなぁと思う。(覆面係長は別としてw …いや、あれはあれである意味混濁してるけれどもw)

優しさも愛情も感じないけれど、静かなる人間の欲望を見せつけられるみたいな息苦しさが漂う「恋のはなし」。この短編、ふと読み返したくなる魅力があります。


では、また!
浅葱