きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

Life is Beautiful / 伊勢原ささら(イラスト:斑目ヒロ)

[あらすじ]
いいことなど一つもない人生に絶望した瑞生は、崖から飛び降りようとしたところを、優しい図書館司書の綾部に止められた。綾部は行き場のない瑞生を図書館へ誘い、さらには住む部屋と温かな食事まで提供してくれる。だが、生まれてこのかた幸福とは縁がなく不信感の塊の瑞生は、その好意を素直に受け取れずにいた。けれど、いつしか瑞生の心は優しく自分を包んでくれる綾部へと傾いていく。そんなある日、過去に綾部に助けられたという男から「あの人は、不幸な人間が大好きなんだよ」と聞かされて……。(電子書籍サイトの作品内容より)

[感想]

人生に絶望した自殺志願の青年と、手を差し伸べる図書館員の静かな再生の物語。

嫌いなものは?と問われて”他人の悪意”と即答するほど人生に絶望し続けてきた瑞生が、再び人を信じ、心に光を灯す過程が丁寧に描かれていて、好きなタイプのキャラクターではないのに惹きつけられる。

自殺志願者を救おうとする際限のない優しさが胡散臭い綾部も、そうせざるを得ない過去を背負っていて、綾部自身の抱える歪みと瑞生が抱える絶望が共依存のような絆を作っていくのだとしたら、不幸な結末に向かう可能性もあり得たと思うけれど、そこを「Life is Beautiful」というテーマに結びつけ、お互いを想う気持ちを持ったことで、綾部も瑞生も人生に対し肯定的に向き合うようになる様を描いているのがとても巧みだった。

ただ綾部については...

綾部の救いの手を勘違いした他の自殺志願者の青年が居たように、綾部の行為は自己満足の延長線上にあったもので、自殺を覚悟するくらい人生に絶望している者にとっては誤解を招く優しさだったことは否定できないと思う。
両想いになった瑞生は綾部のよって人生に希望を取り戻したけれど、綾部によって心を傷つけられた者もいるんだということは綾部自身、胸に刻んで欲しい。


図書館の読み聞かせボランティアの部分は、なんだか共感羞恥心がむずむずして恥ずかしくなってしまったw


では、また!
浅葱 拝