きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

龍の夫―亡国の神― /  須嵜朱

[あらすじ]国王の弟である軍隊長に下った命令、それは――…守護を得るために、龍神の“伴侶”となること。夫となった傲慢な龍に、身体の内側から眷属に作り替えられる“偽りの夫婦生活”。「ほかの誰でもなく、私はお前がいいのだ 数百年、共に生きよう――…」人と深く交わらず孤独に生きると決めたはずが、本当は心の底でずっと欲していた言葉を、龍が与えてくれようとは。そして、龍が誰よりも“絆”に憧れ、孤独だったことを知ってしまった。もう独りに戻りたくない、独りにしたくない――…。一途なオレ様龍×強気な王族軍隊長、永年の愛に変わる人外BL。幸せに満ちる余生を描いた後日談11Pも収録!(電子書籍サイトの作品内容より)

孤独な人間、孤独な龍神

人外×ヒトの異種婚BLだけど、BLというよりは孤独な魂を持つ者同士の結びつきを描いていて、硬派な印象のファンタジー作品。

根本的な思考や価値観が異なる龍神への理解を深めていく過程を描く各エピソードはいいし、世界観やテーマには厚みがありストーリー性は高いのに、繋ぎがぞんざいで踏み込み方が雑なせいで、ぐぐっと物語に入り込めないのが残念というかもったいなかった。

国と兄王への強い思いだけで生きてきた隊長が、龍神の不器用さと孤独に触れ、「大切なものがもう一つ増えた」と言って龍と寄り添うことを選び生涯を共にすることと、「彼らがいる限り国は変わらず、平和は永遠に守られるだろう」というモノローグを結びつけた結末は、どこかユートピア的というか古典の御伽草子的な感じで、独特の読了感があった。
登場人物に名前がついていないのもこの物語の味になってて良い。

誰とも交わらず、ただひたすら見守るだけだったけれど...

家庭を築き命を繋いでいく部下をそばで見守ることしか出来ない隊長の孤独と、人が好きなのに触れ合うことができず枠の外から見守るだけだった龍神の孤独が、普通の人間よりも寿命が長い分だけ重くてせつない。

寿命の違いが龍神と隊長だけでなく、兄王と隊長の間にも存在していて、それぞれの寿命の移り変わりと、それに対する気持ちをさらりと描いた後日談がとても良かった。
個人的には龍神と隊長の関係よりも、兄王と隊長の関係の方が萌えたw

龍神に性別の概念がないということもあっていわゆるBLの肉体的エロは皆無で、最初の方で受けが龍の口の中で舐め回されて、頭の中を掻き回されて精神的に犯されて射精する(した)という描写があるぐらい。物語的にはそれで違和感はないけれど、エロを想起させる感じの表紙はエロ目的の購買のミスリードを狙ってるのか?って感じで...作品内容と合っていないと思う。

※on BLUE 9周年のまとめ記事から漏れていた作品の感想を蔵出し...あとであちらの記事にも追加しておきます<(_ _)>

では、また!
浅葱 拝