きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

十二国記『白銀の墟 玄の月』刊行記念プレゼントキャンペーンの短編1話が配信✨

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新潮社「十二国記」新作刊行記念《全員プレゼント》一話のプレゼントのご案内

という件名のメールで、十二国記の新作短編1話が配信されました!

十二国記『白銀の墟 玄の月』第四巻の帯についていたQRコードから刊行記念キャンペーンに応募すると、2020年発売予定の短編集の刊行に先立って1話分を読めるというプレゼントキャンペーンのものです。



早速アクセスして読みましたが、『白銀の墟 玄の月』の最終局面、鴻基から驍宗、泰麒、李斎らが脱出した直後からの物語となっています。

まさに「そこが読みたかったんだよーーー!!!」という部分が盛り沢山に描かれていて、『幽冥の岸』というタイトルと併せて色々と感慨に耽る短編です。

俗な言い方になりますが、戴と泰麒に思い入れがある者としては最初から最後まで大変おいしい短編でした。どこをとっても読みたかったことが描かれている感...ほんとありがとうございますという気持ち。

個人的に一番強く納得したのは、⚠︎ある目的のため(バレ回避でぼかします)黄海に行くという泰麒の決心です、これはまさに『白銀の墟 玄の月』を経ての泰麒だと思いました。
(あーーーやっぱり十二国記の感想&考察ブログ作りたい。十二国記は腐の目線では読んでないのでこのブログには書けない...)


『白銀の墟 玄の月』が首尾一貫して戴国の史実となる歴史の歩みを追う視点で描かれた小説だったのに対し、この短編は泰麒を中心に登場人物の情意的な側面に迫った小説となっているので、あえて『白銀の〜』の本編には入れなかったのだろうと思います。

プレゼントキャンペーンのアクセス期限

プレゼントページへのアクセス期限は2021年6月11日(金)17:30迄ですので、応募した方はお忘れなきようお気をつけ下さい。

また今回のキャンペーンに応募していない方も、配信された1話を含む短編集の発売は決定している(発売日は不明)ので、ご安心を。

では、また!
浅葱 拝

シャングリラの鳥Ⅱ / 座裏屋蘭丸

[あらすじ]心(ここ)には、一人入れる空きがある…ってこと?性を謳歌する男娼達の楽園シャングリラに、試情夫として雇われたノンケのアポロ。専属となった男娼のフィーに仕込まれるが──奔放な彼が抱える暗い過去。どこか不安定な様を見せるフィーが気になり始める。「一度だけ、好きな女にするように触って」縋るように乞われたアポロは……。変わりつつある、フィーとアポロの関係。試情夫のルールである「イかせないこと、挿入しないこと、絶対に恋に堕ちないこと」この3つのうち、犯してしまったのは──?(電子書籍サイトの作品内容より)

心が揺れて、距離も揺らぐ

意味深なフィーの過去が明らかになる過程で、フィーとアポロの距離感がぐっと近づいていく2巻。

2人の心の動きや葛藤を丁寧に描いているけれど、率直に言ってストーリー展開に取り立てて言うべき新鮮味や特徴がないので印象としてはありきたりだった。
決して面白くないわけではないけれど、次の更新を今か今かと心待ちにするほどの魅力はあまり感じられず...。

1巻は物語の走り出しということで、謎を孕んでいるキャラクターや男娼たちの楽園という舞台の窺い知れない雰囲気にとても面白みを感じたけれど、2巻はより現実的な空気になり色んなことが明瞭になったことで、登場人物(フィーやアポロ以外も含めて)の魅力が感じられなくなった気がする。

個人的にこの「シャングリラの鳥」の登場人物たちは、平均的魅力はあるけれど特別なものがなく、萌えのバロメーターが読んでて大きく振れることがないといった印象。

ストーリーも今のところはまぁ予想がつく展開なので、淡々と読み進めるという感じ。

エロスのシーンは相変わらず美しくてエロい✨
今回初めて座裏屋蘭丸さんの漫画を電子書籍で購入したんですが、トーン処理も思ったより綺麗に電子に落とし込まれてて良かったです。(某○するインテリジェンスは電子版のトーンが見苦しくて紙で買い直したので💧)

Shangri-la という理想郷の中で

次巻は試情夫のルールから一線を超えたアポロが、自分の変化に向き合うことになるのかな?
シャングリラという楽園が醸し出す”非現実的な現実”の中での変化って、一生その中に居るならどんな方向へ変化しても問題ないけれど、楽園を出て一般社会という現実に戻る日が来るとしたら、その変化は所詮まぼろしに過ぎないと思うので、次巻以降、どういう展開をしてどこに着地点を置くのか、という点にとても興味があります。

でも次の座裏屋さんの新刊は「コヨーテ」かな?


では、また!
浅葱 拝


座裏屋蘭丸さん関連記事
blnote.hatenablog.jp

ロッカバイディア / 暮田マキネ

[あらすじ]
「俺にできることは全部叶えてやりたいから」大病院の次男坊で、奔放に日々を過ごす八尋(やひろ)。そんな八尋にとって大切なのは、幼馴染みの累(るい)だけ――。養子という立場に引け目を感じている累に、自分にだけは甘えていいと教え込んできた。そうして幼い日を過ごした二人はやがて、身体を重ね始める。曖昧なバランスで保たれていた関係だけれど、義母の妊娠を機に突然、累が「終わり」を口にして!?
電子書籍サイトの作品内容より)

両片想いと共依存の間で相手を想う

「欲しいものを欲しいだけ全部あげる」という思いを抱いて幼馴染の累を大切にしてきた八尋と、「望むことは罪だ」という思いを持ちながら八尋の優しさは「慰めで支え」だと縋っている累のすれ違う想いが痛々しい。
どちらも子どもの頃から唯一の存在だったことは確かなのに、純粋な友情と呼ぶにはそこに絡まる感情は複雑で、どんどん友情の枠からは外れていく気持ちに流される行動が、微妙な均衡を保っていた関係をさらに不安定なものにしていく様子が丁寧に描写されていてとても良い。

虐待されていた子どもが、引き取られた先の愛情深い家族の期待を裏切らないように、と優等生で居続けようとする思いが強くて...というのは(虐待児童の抱える心の傷の広範的なテーマの一つとはいえ)正直病みBLの題材として取り上げられ易くありがちだし、ストーリー自体にメリハリが少ないために、累と八尋の心情にばっかり注視して描いているので若干グダグダしている印象があるけれど、そのグダグダとした澱んだ流れの悪さが、彼らの感じているもどかしさなんだろうなぁと思う。

暮田さんのちびキャラはカワイイの極みなだけに、可愛さに比例した健気さが真っ直ぐに突き刺さって、現在と交互に挟み込まれる子ども時代のエピソードは泣ける。
そして高校生になった現在、心の奥にしまっていた気持ちをようやく養母に告げることが出来て「おかあさん・・・っ」って泣く累に泣かされた。
あそこで累の気持ちが、保科家の本物の家族になれて本当に良かった。

累はどれだけ優等生であっても、家族に大切にされていても、自己評価が低くて終始、不安定な気持ちの上で一人でぐるぐると苦しんでいて、そういう思い悩むうじうじ系の受けは行き過ぎるとうざいけれどw、この累の気持ちの描き方は良かったかな。


独占欲も、執着も、不安定さも、仄かな闇を孕んでいるけれど、破滅に向かうほどの凶悪な共依存にまでは行きつかない闇...という匙加減が暮田マキネさんらしい作品で好きです。

では、また!
浅葱 拝

素晴らしい季節に優しい君と / 湯煎温子

[あらすじ]
高校で念願のオタクライフを謳歌するはずだった榎木純平くん。電子技術部存続の危機に駆け回るうち、学校イチのイケメン坊主・白滝涼介くんと出会う。恵まれた体格に精悍に整った容貌、同じ一年生らしからぬクールな佇まい――自分とはまるで違う白滝くんに憧れ、やがて、もっと笑ってほしいと願うようになって……? じんわりキラキラときめきが止まらないユースフル・デイズ
電子書籍サイトの作品内容より)

甘酸っぱくて、優しい

元野球部エースのイケメンと、電子技術部のビン底眼鏡男子という正反対な2人のキャラクターが生き生きしていた。
榎木くんの真っ直ぐに物事を見て物怖じしないところいいね〜。
登場当初どこか冷めた雰囲気だった白滝くんが、榎木くんの空気に感化されてどんどん活力をみなぎらせていく様子が、丁寧な心の変化の描写と合わせて描かれていて、相乗効果的に魅力が増していく2人の様子がとてもまぶしかった。
正反対な2人なのに、野球を通して家族の絆を繋いでいたかったからという理由で肩を壊した白滝くんの人柄の本質と、榎木くんの純粋で一生懸命な姿勢がぴったりと合う感じ。

白滝くんも榎木くんも、趣味や部活や学校生活や自分自身について高校生らしい若さの悩みで、自分で自分を肯定しきれない部分があったけれど、お互いを知って、好きになって、前向きになり、陰りのない笑顔で手と手を繋いで川べりを闊歩していくパッピーエンドに大満足。
電子技術部の先輩もオタク丸出しキノコかと思っていたら、一本筋の通ったところを見せてくれて、あぁ青春だなぁとほっこり。

書き下ろしの「はじめてのデート」編はこっちがにやけてしまう可愛さ。
初エッチ編は見てるのがなんか恥ずかしかったw 筋トレする榎木くんには笑った。

登場人物の苗字が鍋にちなんだ具材になっている遊び心可愛いw

では、また!
浅葱 拝

龍の夫―亡国の神― /  須嵜朱

[あらすじ]国王の弟である軍隊長に下った命令、それは――…守護を得るために、龍神の“伴侶”となること。夫となった傲慢な龍に、身体の内側から眷属に作り替えられる“偽りの夫婦生活”。「ほかの誰でもなく、私はお前がいいのだ 数百年、共に生きよう――…」人と深く交わらず孤独に生きると決めたはずが、本当は心の底でずっと欲していた言葉を、龍が与えてくれようとは。そして、龍が誰よりも“絆”に憧れ、孤独だったことを知ってしまった。もう独りに戻りたくない、独りにしたくない――…。一途なオレ様龍×強気な王族軍隊長、永年の愛に変わる人外BL。幸せに満ちる余生を描いた後日談11Pも収録!(電子書籍サイトの作品内容より)

孤独な人間、孤独な龍神

人外×ヒトの異種婚BLだけど、BLというよりは孤独な魂を持つ者同士の結びつきを描いていて、硬派な印象のファンタジー作品。

根本的な思考や価値観が異なる龍神への理解を深めていく過程を描く各エピソードはいいし、世界観やテーマには厚みがありストーリー性は高いのに、繋ぎがぞんざいで踏み込み方が雑なせいで、ぐぐっと物語に入り込めないのが残念というかもったいなかった。

国と兄王への強い思いだけで生きてきた隊長が、龍神の不器用さと孤独に触れ、「大切なものがもう一つ増えた」と言って龍と寄り添うことを選び生涯を共にすることと、「彼らがいる限り国は変わらず、平和は永遠に守られるだろう」というモノローグを結びつけた結末は、どこかユートピア的というか古典の御伽草子的な感じで、独特の読了感があった。
登場人物に名前がついていないのもこの物語の味になってて良い。

誰とも交わらず、ただひたすら見守るだけだったけれど...

家庭を築き命を繋いでいく部下をそばで見守ることしか出来ない隊長の孤独と、人が好きなのに触れ合うことができず枠の外から見守るだけだった龍神の孤独が、普通の人間よりも寿命が長い分だけ重くてせつない。

寿命の違いが龍神と隊長だけでなく、兄王と隊長の間にも存在していて、それぞれの寿命の移り変わりと、それに対する気持ちをさらりと描いた後日談がとても良かった。
個人的には龍神と隊長の関係よりも、兄王と隊長の関係の方が萌えたw

龍神に性別の概念がないということもあっていわゆるBLの肉体的エロは皆無で、最初の方で受けが龍の口の中で舐め回されて、頭の中を掻き回されて精神的に犯されて射精する(した)という描写があるぐらい。物語的にはそれで違和感はないけれど、エロを想起させる感じの表紙はエロ目的の購買のミスリードを狙ってるのか?って感じで...作品内容と合っていないと思う。

※on BLUE 9周年のまとめ記事から漏れていた作品の感想を蔵出し...あとであちらの記事にも追加しておきます<(_ _)>

では、また!
浅葱 拝

3月に購入したBL小説(全4冊)

4冊...
3月発売のBL小説で電子書籍化を待っているものが5冊あるとはいえ、3月は気になるものが少なかった。

そういえば、樋口美沙緒さんの新シリーズ「王を統べる運命の子」を購入するか迷ってて3月は未購入だったんですが、4月に入って2巻が出て、やっぱり気になるので4月に1、2巻まとめて購入しました。

2020年本屋大賞「流浪の月」

凪良ゆうさんの「流浪の月」が2020年の本屋大賞を受賞しました。
BL小説好きのいち読者としては、長らくBL小説のフィールドでキャリアを築いてきた凪良ゆうさんの受賞、嬉しかったです。
文芸小説の編集部に身を置く者としては、本屋大賞というコンテンツに対する思いが色々とありますが(笑)、今回のノミネート作品10作の中で「流浪の月」はベスト3には確実に入ると思っていた作品です。
凪良ゆうさんの今後のますますのご活躍を祈念しております。

ところで

今、新規でBL本を読む余裕がなくてブログ更新できないのが地味に悲しみなので、ずーっと自分用にEvernoteで書き残している感想を抜粋してあげようかなぁと考え中。公開するつもりで書いてないから書き殴りに近くて大体200字〜多くても500字ぐらいのやつ。
ブログのテンプレを作っておいたらEvernoteから感想を引っ張ってきて貼り付けるだけだし、仕事の気分転換にもいいかなぁと。今、毎日18時間ぐらい仕事してるので...自分のことに使う時間を少し作りたい...。
そこそこ新しめの作品の感想を選んで上げるつもりですが、最新刊の感想じゃないので興味ある人は少ないかもしれない...自己満足ブログですw
十二国記の考察ブログは先延ばし中...。)


では、3月のBL小説の購入記録どうぞ〜!

3月に購入したBL小説

(順不同/敬称略/あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)
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アオイトリ / 木原音瀬(イラスト:峰島なわこ)

[あらすじ]
発情期が軽い体質のΩ・河内は35歳まで童貞でいたらβになれる可能性があると医師に言われ、彼女と結婚するためにそれを守ってきた。しかし誕生日直前、会社で強烈な発情期に襲われ、動けなくなってしまう。助けにきたのは『運命の番』であるαの犬飼だった。犬飼はスタイリッシュで仕事もできる若き営業部のエースで、入社以来ずっと河内に片想いをしていたのだった。妊娠した河内は犬飼のプロポーズを拒絶するが…?

嫌な奴 / 木原音瀬(イラスト: 丹地陽子)

[あらすじ]
学生時代に杉本の「親友」だった、粗暴で自己中的な男、三浦。病に臥せる三浦を、杉本は十二年ぶりに病院に見舞う。そこから再び始まった二人の奇妙な関係は、不本意な同居生活まで発展する。これはいったい、友情か、愛情か、執着 か……。傑作BL『箱の中』の作者が、執拗かつ理不尽な同性同士の愛を描く。



ひとこと:1998年に出版されたビーボーイノベルス(ビブロス)の作品を大幅改稿して、講談社文庫から再出版されました。ビブロス時代のものも読んでいて今も持っているので、どんな風に加筆改稿されたのか楽しみ。
講談社文庫は木原音瀬さんの作品の中で「箱の中」「美しいこと」「秘密」を文庫化していて、作品の選定がいいですねぇ。

諸侯さまの子育て事情 / 義月粧子(イラスト:小禄

[あらすじ]
「女神のようだな」同盟を結ぶ諸侯との会議でリーダー的存在のルドルフに圧倒されるフィネス。意見を対立させる二人だったが、ルドルフの一人息子セオドアをきっかけに関係が変化していく。フィネスは孤独なセオドアと自分を重ねて接するうちに、ルドルフとの距離も急接近!? さらに、同盟強固のため二人が婚姻を結ぶことになって!? 「美しくて煽られた」と組み敷かれ、何度も抜き差しを繰り返される。白濁を吐き出し、失神するほどに突き上げられて…。俺様貴族×美人貴族の溺愛。

竜王子の天翔ける花 / 戸田環紀(イラスト:小山田あみ)

[あらすじ]
天涯孤独で身寄りのない梧桐ルカは、十九歳のある日、ケメルマイデン王国という国に召喚される。そこは半竜半人の人々が住む竜神国で、ルカはその国の第一王子のヴィルヘルムと彼の叔父に召喚されたらしい。なぜ自分が呼ばれたのか、この国で何をするべきなのか、ヴィルヘルムに尋ねても何も教えてもらえない。そんな時、ヴィルヘルムの弟・アーベルと出会う。アーベルは過去の誘拐事件をきっかけに口をきくことができなくなっており、そんな彼の面倒を見ることを申し出たルカは、王宮の手伝いをしながら日々を過ごすことになった。弟想いのヴィルヘルムとの距離も縮まり、王国内でようやく自分の居場所を得ることができたルカだが、召喚された本当の理由は、実は竜神への生贄になるためで――?


では、また!
浅葱 拝