きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

コヨーテ III / 座裏屋蘭丸

コヨーテ III / 座裏屋蘭丸

[あらすじ]
人狼〉であることを隠しながら暮らすコヨーテは、想いを寄せはじめたマレーネが、人狼と敵対しているマフィアの後継者だと知ってしまう。裏切られたと絶望し、彼を拒絶するコヨーテ。しかしマレーネは、一目会おうと単独で人狼の住処に乗り込んで来る。彼を信じたい気持ちと、種族の狭間で揺れるコヨーテだが――。(電子書籍サイトの作品内容より)



[感想]
伝えなければならない気持ちのためにヴァラヴォルフの居住地区に乗り込んでくるマレーネの浅はかさも、会わない意志を固めていたのに危険を冒してまで会いにきたマレーネの気持ちを聞きに会いに行くコヨーテの青さも、揺り動かす原動力となっているのは”愛する”という気持ちなのが尊い。特に満月期の終わった朝にコヨーテが狼の姿でマレーネのもとを訪れるのがすごく良かった。(でも狼から人型に戻った時に全裸じゃなく服を着ていた視覚的違和感がものすごかったw )

1・2巻は宿敵の一族であり敵対する二人がそうとは知らずに恋に落ちて、真実に気づいたけれどそれを告げることができずに関係を深めてしまい...という苦悩が主軸でストーリーが展開し、特に2巻のラストでマレーネが単身ヴァラヴォルフの居住地区へ...という流れだったこともあって、浅はかな過ちと愚かさ故のすれ違いの果ての悲劇を想起させたけれど(いわゆるロミジュリ的な)、3巻でその苦悩とすれ違いの回避を過去の告白+両想いになる愛の告白でまとめた構成がとても気に入った。

ただ今後は、人狼とガーランド一族との抗争が本格的な終着へ向けて動き出すので、人間(ガーランド一族)の醜悪さや業の深さと、人狼(キーファーの群れ)の復讐というこれまで以上にシビアな環境下で、離れ離れになった二人がどうなっていくのか...また新たな悲劇の雰囲気を醸しているんだよね...。キーファーに死亡フラグ立ってる気がするんだけど...思い過ごしであって欲しい。

1巻から不穏な空気を纏っているドミニクが3巻ラストであの登場...ゾクッとくるね。ドミニクの立ち位置がガーランド側なのか人狼側なのか、もしくはどちらも潰したいと思っているのか、まったく別の思惑があるのか...真の腹づもりが謎のドミニクが今後のキーパーソンになるのは間違いない。
ところで1巻でドミニクの瞳の瞳孔の形から人狼?と思い、2巻のコヨーテの過去エピからドミニクはコヨーテの父親なんじゃないかと思っているんだけど...どうなんだろう?


物語が大きく転換して動き出しそうな4巻を楽しみに待ちます。
座裏屋蘭丸さんの作品の中では「コヨーテ」のストーリー性が一番好き。

では、また!
浅葱 拝