きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

革命のα / 鹿島こたる

[あらすじ]世はα全盛期。すべての富と権力はαの元に集中し、私利私欲のままにそれを貪る。媚びへつらうΩ・βの姿を見下ろして――…。そんな格差社会に一石を投じる考えの持ち主であるモーリスは、輝くブロンドに陶器のような白い肌。それはそれは美しく、賢く、気高い、名門セシェル家の御曹司α。側仕えの使用人β・シモンと良い仲だが、家督を継ぐ身であるが故、子を成すΩとの結婚は、避けて通れぬ道と定められていた。
性が、地位が、運命が、「愛」を翻弄する。絢爛耽美オメガバース。(電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]

絢爛耽美

フランス絶対王政時代に準えたような時代設定で、αの専制支配時代に乳兄弟で側支えのβのシモンと愛し合っている貴族のαモーリスが、封建的なしきたりに抵抗しつつ新たな時代を見据えて生きていく様子が耽美に描かれていて、絵柄と作品全体の雰囲気がベストマッチ。
ロココ調の豪華で煌びやかな衣装&美しい巻き毛や繊細な睫毛を余すことなくビシバシ描いていて、”絢爛耽美”の煽りに偽りなし❗️です。

「神は我々に理性を灯された」

オメガバースを題材にしていて、”運命の番”のα×Ωの組み合わせ以外の者たちが恋愛関係になる場合、いかに本能に流されず愛(感情)を貫けるかっていうところがメインテーマになるから、そういう意味ではこの「革命のα」も、β×αのカップリングで”本能に勝る愛”をテーマにしていて、オメガバースものとしての目新しさはないかな。
でもαとしての本能に抗う理由を問われたモーリスが「神は我々に理性を灯された」という言葉を用いたのが、この世界観にぴったりの台詞ですごく光ってる。
それとモーリスが、運命の番として登場したΩのクロードのことを蔑ろに退けるのではなくて、一人の対等な人間として友情を認め、体制に異議を唱える同志として新時代へと歩んで行くっていうのは、オリジナリティがあっていいと思った。

残念なのが、肝心のシモン×モーリスのメインパートが凡庸な展開で、なんだか薄い印象しか残らなかったこと。
モーリスの苛烈さとシモンの献身さの親和性がぴったりのカップルなだけに、どうして好きになったのかとか、どうやって愛を深めていったのかとか、もっと二人の感情の積み重ねを読みたかったよ......あとがきページに添えられてたショタのモーリスとシモンがめっちゃ突き刺さったので、二人の子供時代のエピソードとかね。読みたい...。

鹿島こたるさんは好きな漫画家さんですが、今作は少し物足りない感じがしました。
でも好きですw 

アンソロジー『調教覚醒BL』

に収録されていた「軍服のオーダー」という読切も入っています。
こちらは下官×上官で、軍隊もの・下克上・コスプレHというキーワード盛り盛りの短編ですw


では、また !
浅葱 拝