社史編纂室で恋をする / 栗城 偲(イラスト:みずかねりょう)
[あらすじ]社内である濡れ衣を着せられた志月は、「流刑地」と呼ばれる社史編纂室に異動させられる。新しい上司は、なんと数日前に新宿二丁目で一夜を共に過ごした男・稲葉。最初の出会いをなかったことにしつつ、志月は編纂室の仕事に慣れていく。ところが稲葉を二丁目で再び見かけた時、彼に惹かれている自分に気づいてしまう。志月は恋心を秘めながらも、男と二人でいたのを見たと稲葉に告げると、不意に抱き寄せられ……? イケメン二面性攻×体育会系ポジティブ受、オフィス・ラブ!!(電子書籍サイトの作品内容より)
[感想]
王道+α
一夜限りの相手が異動先の部署の上司だった?! ...という王道ハプニングから始まるBLだけど、事の発端となった志月の左遷に絡んで、セクハラの目撃、横領の濡れ衣、スパイ疑惑など謎が二人の関係に絡みながら展開されていくので、マンネリ感は感じさせない✨
社史編纂室という職業も珍しくて興味深かった ! んだけど、謎解き+焦れラブがメインの筋になっているので、お仕事BLのお仕事部分の描写は少し物足りないかな?
社史編纂室のメンツも、仕事面&事件面のどちらでも空気サブという感じ。志月との絡みがある加藤は、もっとメイン筋に絡んでくるのかと思ってたんだけど......全然そういうことはなかったのでちょっと拍子抜けしたかな。...でも加藤の存在は、志月の精神的バランスをとる感じで”つかず離れずの同僚”という間柄がちょうど良いバランスだったようにも思う。こういうのってどこを纏めてどこまで広げるのか、匙加減が難しいんだろうなぁ。
走ってきます!
志月がポジティブ過ぎずネガティブ過ぎず...なのがとても良かった。あとがきに書かれていたけれど、100%陽キャラ、100%脳筋キャラだったら、読んでて感情に付き合わされるのしんどかったと思うし、私的にはうざキャラ認定入って嫌いになってたと思うw
陰と陽のバランスが丁度いい志月の塚森常務に対する尊敬全開の目線も、悩むと走って気持ちを落ち着けようとするところも、嫌味がない真っ直ぐさでむしろ好感が持てる。
ただ「”察しがいい”とか絶対嘘だろ...」って稲葉のつぶやきには完全同意w 事件が片づいて稲葉といよいよって時すら、清々しく「走ってきます!」って...あれ面白かったw
行きずりの一夜のあと、編纂室の室長補佐という立場で現れた稲葉はルックスも中身もイケメンで、ボサッとした格好をしていても隠しきれない魅力が満ち満ちてるんだけど、そこに少し謎も抱えてるのが更にいい味出してる。大局的見地に立って落ち着き払ってクールに物事を見ているのに、志月のことが気になり過ぎて意外とわかりやすく嫉妬してたり焦ったり、人間くさい魅力もあって、そこがまたいいんだよね✨ビシッと決めた隙のないスーツ姿も、ボサッとだらしない仕事疲れした格好の時も、大人の色気があります。
みずかねりょうさんのイラストもキャラクターの魅力を存分に引き出していて、イラストありの電子化で嬉しかった!
本作で登場した塚森常務のスピンオフも小説ディアプラスで掲載されていたみたいで、書籍化が楽しみです✨
では、また!
浅葱 拝