きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

2月に購入したBL漫画(全9冊)

3月ですね...ひと月過ぎるの早過ぎます...。

ということで2月に購入したBL漫画全9冊です。
続刊を待っていた作品あり、初めての漫画家さんの作品あり、今回も"絶対気になる"と思った漫画を厳選チョイス。
この9冊以外に数冊”ちょっと気になる”という漫画があったんですが、読む時間を取れそうになくて断念...仕事って増えることはあっても減ることはないですよね......。

ではどうぞ〜。
(順不同/敬称略/あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)
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神様のウロコ(2) / 日ノ原巡

[あらすじ]土地を守る龍神・鱗に嫁にと求婚された、休筆中の小説家・智治。求婚は断ったものの、人懐っこい鱗にほだされ、居候として同居生活を始める。そんなある日、鱗の伴侶にふさわしくない、と襲撃してきた化け狐に、智治が怪我をさせられ―――。新鋭・日ノ原 巡が描く、龍神×男嫁の異種恋愛譚、心と体が繋がる初夜を描いた第二巻!



[感想]
智治が鱗さんに魅かれる過程とストーリーの展開に無理がなくてすっごく良かった。
初めて体を繋ぐときも、鱗さんが消えてしまわないための行為としてではなく、恋人として触れ合いたいという気持ちで...甘くて色気があるHで大満足。鱗さんの背や腕にウロコが出てる描写も好き。
心が通じ合ったけれど嫁となるために人間を止めるのではなく、契約に縛られず生きる道を探すっていう智治の決心もいいし、幸せそうに笑い合うラストの二人の様子にもほっこり。
天狐のキャラにちょっとしたせつなさを感じて好きだな。甥っ子と天狐はこの先、何か特別な関わり方をしてくるのかな?ということも気になるけれど、幼馴染みの司が何やら意味深に鱗と智治を見ていたのは3巻への伏線だよね?横恋慕な展開だとありきたりで個人的にはテンション下がるかもなぁと思ってるんだけど...どうなるのか気になります。


コヨーテ III / 座裏屋蘭丸

[あらすじ]〈人狼〉であることを隠しながら暮らすコヨーテは、想いを寄せはじめたマレーネが、人狼と敵対しているマフィアの後継者だと知ってしまう。裏切られたと絶望し、彼を拒絶するコヨーテ。しかしマレーネは、一目会おうと単独で人狼の住処に乗り込んで来る。彼を信じたい気持ちと、種族の狭間で揺れるコヨーテだが――。



[感想]
📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp


なのかのむすび / ユキムラ

[あらすじ]かつて尾頭家には猫神の弧君、水槌家には蛇神の一里丸という守り神がいて、百年おきに“七日間の婚姻”という儀式を行っていた。神に選ばれた一輝と桜介は、なりゆきで祝言を挙げることに――…。全部、真似事のはずだった。祝言も、初夜も、接吻も。苦くて甘い縁を描いた、和風プロミス・ラブ!!



[感想]
表紙はどシリアスな印象だけど中身は割と軽いテンションというか......だいぶ印象の温度差があったw メインの一輝が深く考え込まない質なので、深刻な部分もあっさりすっ飛ばす勢いでざくざく問題を乗り越えていって、まるでダイジェスト版を見てるみたいな早回しっぽい展開で、物語に入り込む間も無く終わってしまった。もう少しシリアスに寄るか、複雑な家庭事情の中に居た桜介の心境をクローズアップして欲しかったかなぁ。和風テイストで猫神と蛇神の依代になるという題材はすごく良いし、一輝も桜介もキャラが良かっただけに、大雑把な漫画だったのが残念。


1人と一人の3650日 / hitomi

[あらすじ]10年前に「キモいんだけど」と酷い言葉で自分をフッた勝巳と再会したゲイの牧。純粋に再会を喜ぶけれど、ノンケのはずの勝巳が評判の悪い男とセックスをしていると知る。過去、保身のために牧を傷つけた勝巳は見知らぬ男たちに乱暴に抱かれ、痛めつけられることで赦された心地を得ていた。その事実を知った牧は、勝巳にこう告げる――。「僕が勝巳くんに罰をあげる」hitomi、渾身のデビューコミックス!!


[感想]
悔やんでいる過去を”痛めつけられる”という歪んだ形で受け入れることで、自分を罰している受けの心境はわからないでもない。でもその行為は、自分を憐むために自己犠牲心をこじらせてるだけで、結局のところ自己満足の罪滅ぼしをしていただけのように思える。
そうやって本当の意味で自分の行為とそこに生じる感情を直視していなかった勝巳が、後悔の発端となった牧との再会で牧自身から”罰”と称した肉体関係を与えられ、本当の贖罪と救済を得られたのは王道の流れだけど、丁寧に描かれていたと思う。
ただちょっとストーリーに余白がないというか、描きたい部分をとにかく詰め込んで描いた感じがしたかなぁ。とはいえ、BLでは割とありがちなテーマを真摯に描いていて、絵も好きなタッチなので、今後の作品を期待させられる漫画家さんだと思いました。
短編が1作入っていてそちらも良かったです。


STAYGOLD 5 / 秀良子

[あらすじ]甥っ子(18)→叔父(アラサー)優士、ついに陥落!? お前の見てる世界に俺の居場所はあるんだろうか。中山家を出て、2年ぶりに帰省した駿人はすっかり大人びていた。もうあの頃のように優士に想いをぶつけてはこないし、射抜くような視線も向けてこない…。諦めのような、寂しさのような、煮えきらない気持ちに懊悩とするなか、突然知らされた駿人のアメリカ行きの決意。激しくざわめく心に優士は戸惑い、そして…。「この感情につける名前を俺はまだ――。」離れた心がふたたび交錯する、緊迫の第5巻!

[感想]
幼い菊花も含めて登場する人物全員がそれぞれ自立した精神で生きているからこそ、諦めにも似た聞き分けの良さを自分に対してすら発揮してしまう感じが、どうにもこうにもツラい。
そんな中で唯一と言っていいほど動揺という感情で危うく揺らぐ優士。5巻の優士の心の揺れ具合が圧倒的な真実味を放って展開して、最後のホテルのくだりは、グワっとこっちまで感情が揺れてなんか変な声がのどにつまったw あーーーーここで続くのかーーーーーっ!
4巻読んで正直、駿人×優士よりもコウと日高のその後の方が気になると思ってたけれど、5巻読むとめちゃくちゃ駿人×優士も気になりますw


罪と咎 / 天河藍

[あらすじ]俺は動かない人間にしか興奮しないんだ――愛を知らないサイコパス×人生に絶望した青年狂おしほどの愛憎劇…【特典ペーパー付き!!】 片親で育った昴は、対人依存症の母とその愛人による不当な暴力に耐えながら、家賃を稼ぐために働かされていた。ある日、前借りした給料を愛人に奪われた昴は、追い打ちをかけるように母と愛人が保険金目当てに自分を殺そうとしている会話を聞いてしまう。「俺、なんのために生きてんだろ…」生きる気力を失い、死を望む昴。行動を起こそうとしたその時、見知らぬ男・晃成に、自殺するくらいなら自分のものになるよう迫られる。絶望を前にした昴にとって、それは甘美な誘惑に思えて――

[感想]
「薔薇とヘドロ」と同様に、愛情が希薄な環境で育ったキャラクターと、病んだ執着と愛がテーマになっていて、最終的に二人きりの箱庭の中で相互依存のような幸せを感じて生きていくタイプの話だけど、「薔薇とヘドロ」よりもこの作品の方が攻めと受けが互いに愛という感情を抱くに至った理由はわかりやすかったかな。
暴力と闇と執着の果てに生まれるなんらかの感情や関係性を描くのが性癖の作家さんなのかと思うんだけど、後ろに入ってる短編「片恋トライアングル」みたいな軽いタッチのアホエロ系も描いていたりして...雰囲気の異なる漫画を楽しめる1冊ですw


滅法矢鱈と弱気にキス(1) / 腰乃

[あらすじ]変転童貞α男子高生×ブアイソ処女Ω研修医のDestinyラブ!第二次性別検査で初めてαの結果が出た男子高生・横須賀。両親ともβゆえに驚きと動揺を胸に、義務付けられた国の少子化対策説明会へ出向くと、でかでかと「フィーリングカップルGOGO!!お見合い会場」という文字が踊る看板がお出迎え…!一抹の不安を抱きつつ歩を進めると、そこには可憐で可愛らしい女子Ωちゃんが大勢v 相性の良い娘が見つかったら彼女ができる!?と俄然やる気になって相性診断に臨む横須賀だったが、92%と超レア最高クラスの相性を叩きだしたのは無愛想で目付きの悪い……オトコ?!?!?!?

[感想]
腰乃さんの漫画はいつも読むのにすごく苦労するんだけどやっぱり面白いなぁw
オメガバースものだけど独自設定ありで、基本わちゃわちゃしていながらも、Ωとしての苦悩やβからαになった高校生の戸惑いの部分もちゃんと描いていて、全体のバランスがいい。Ωの静香ちゃんのイケイケgo goな暴走気味の熱烈アタックの根底に、ずっとずっと番を待ち続けていた積年の思いがあるのが愛おしくて、区役所の皆さんが応援したくなる気持ちに共感。
少しずつ距離を縮めて、相手のことを知って、この先どうやって番になるのか...楽しみ。


簡易的パーバートロマンス 3 / 赤原ねぐ(原作:瀬森菜々子)

[あらすじ]「俺……完・全・に鹿嶋のこと好きじゃねえかよ!!」“ドMヤンキー”の鹿嶋幸と、鹿嶋の『顔』が世界一好きな“顔フェチ”の真田亮司。とうとう鹿嶋のことを好きだと自覚してしまった真田だが、今の関係を壊したくないと告白はしないことに決める。しかし、進級したことでクラスが離れ離れになり、二人の関係にも少し変化が訪れ……? 連載時から大好評だったドキドキの修学旅行編も収録! 顔フェチ(不憫)イケメン×ドM(野獣)ヤンキーが繰り広げる、恋愛偏差値“3”ラブコメ、3rdシーズンに突入です!

[感想]
鹿嶋がユキのことを”そういう意味”で意識し始めて挙動不審になり、ユキはユキで心境に変化が...という展開の3巻は、修学旅行というイベントもあり胸キュン度高め。
3巻は初期恋愛感情の動きが多くて、萌えに含み笑いを漏らしてしまう箇所が多かった。一人でぐるぐる赤くなったり青くなったり、嫉妬して硬い態度になったり落ち込んだりする鹿嶋のあたふた感は王道だけど刺さったw 一番刺さったのはユキが鹿嶋の態度に何度かモヤる中で、修学旅行の夕食のバイキングで「まだ途中だろ、バカ」ってつぶやくところ、最高にギュンってきたw
それにしても気持ちの"検証"のために納得いくまで街で殴られるとか、ユキは斜め上行くなーと思ったけど、最後「お前が性癖になったんだと思う」ってw そういう検証結果に至っちゃったかーw あー早く続き読みたいー。


NEVER GOOD ENOUGH 1 / CTK

[あらすじ]「兄にそうしたように俺にも足開いてくれます?」長年付き合っていた恋人に振られたばかりのルイの前に、元恋人の弟・テオが現れた。傷心中にもかかわらず不躾に詮索してくるテオに苛立ち、ルイは「兄を振ったのは俺だ」と嘘を吐く。だが、それをきっかけにテオに付きまとわれるはめに。嘘がバレれば終わる関係。別にそれで構わない。そう思っていたはずが、テオの執着の矛先はいつしかルイへと向かいはじめ――。電子限定描き下ろしマンガ1Pを収録!

[感想]
絵もストーリーも上手いし読んでる時は面白いと思うのに、いまいちグッとこない作家さんだったけれど、これはだいぶ好きかも。といっても完結していないので最終的にどうかはわかりませんが...。ルイ、テオ、ニックのそれぞれの思惑の絡まりがこの先どんなドラマを生むのか、特にテオの兄に対する執着に興味がある。


では、また!
浅葱 拝