きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

華は褥に咲き狂う 1 〜 5 / 宮緒葵(イラスト:小山田あみ)

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[あらすじ]
恵渡(えど)に幕府が開かれて百年あまり。庶出ながら奇妙な巡り合わせで八代将軍となった十八歳の七條光彬(しちじょうみつあき)は、このたび都より御台所を迎えることとなる。だが嫁いできた相手は、絶世の麗人ではあるものの紛うことなき男子だった。「お会いしとうございました、背の君」そう告げる御台――純皓(すみひろ)から本気の熱が感じられ困惑する光彬。そして迎えた初夜、純皓は巧みな手練手管で、女性嫌いで初心な光彬の身体を開いていき……? 御台所×将軍の豪華絢爛色恋絵巻開幕。(電子書籍サイトの作品内容より:1巻)

感想:

架空の世界の恵渡(えど)幕府が統治する時代の八代将軍と御台所の濃厚愛を綴った時代劇

至極真面目な時代小説の様相を呈する物語でありながら、八代将軍光彬のもとに嫁いできた奥方が男だったというとんでも設定で、更にカップリングが御台所(妻)×将軍(夫)という絶妙さw
1巻読んだら面白くて予定外に5巻まで一気読みしてしまったw

八代将軍光彬は剣豪であり、男気と義心にあふれる実直さで将軍としても人間としても申し分なく完璧、...でも自分に”人たらし”の魅力があることにはまったく気づいていなかったり、色恋に関しては朴念仁...というギャップ萌え。
一方、御台所の純皓は、慎ましやかに大奥をまとめ、妖艶な美しさで周囲を魅了しながら将軍を支えるたおやかな妻...でありながら実は西の闇の組織「八虹」の頭として相当な手練れの豪傑。
「八虹」の頭としての冷酷なキレ者っぷりもいいけれど、純皓の1番の魅力はやっぱり上様に対する並々ならぬ執着心w
執着心と嫉妬心で雄み全開になる床入りエピがどの巻にも複数回あってw 濃厚エロスむんむんです。小山田あみさんの挿絵も悶絶モノの美麗さ...眼福。

巻ごとに持ち上がるやんごとなき事案×二人の関係性の変化も見どころ

1巻は御台所として男の純皓が光彬のもとに嫁いで来て、光彬が純皓を受け入れるまでの比較的シンプルなストーリーだけど、2巻からは二人を取り巻く周囲にやんごとなき事案が持ち上がって、それらを解決に導きながら二人の関係性がより強固なものになっていく構成で納得の面白さです。
特に2巻は恵渡の町に辻斬りが現れ、それを追ううちに妖刀「鬼讐丸」や東の地の闇組織「紅鞘」等の謎も絡み出す中で、夫婦となって蜜月を過ごしつつも闇の組織「八虹」の頭であることを隠したままの秘密を抱える純皓の煩悶が描かれていて、物語のふくらみと読み応えが一番好きですね。
3巻では「上様の種」を残したい幕閣たちが、光彬のもとへ側室候補を送り込んできて...というお世継ぎ問題を主軸にして、陰陽道の呪いという要素も取り入れつつ、光彬と純皓が夫婦の絆をさらに揺るぎないものにするための物語になっています。シリーズ全体を通して読むと光彬が幼弟・鶴松を大切にしている描写がこの3巻であるのもよくできてるなぁと思います。
4巻は光彬が信頼し、剣術の好敵手として好感を持っていた御三家筆頭・尾張藩の七條彬春が恵渡にやって来て、純皓の嫉妬が大爆発の巻w 事件の活劇的展開と相まって躍動感のある4巻です。2巻で「八虹」の構成員であることは告白したものの、頭として冷酷非道な行いをしていたことはずっと伏せていた純皓がようやく真実を告白し、光彬に受け入れられるという激アツの展開もあり、4巻も盛り沢山で好き。
5巻は光彬の父で先代将軍の隠し子問題の裏側にある人身売買がテーマになっていて、真の吉五郎との最初で最後の対面のエピソードは思わずグッときた...。


最初は純皓の強烈な執着心を丸ごと受け入れる光彬の度量のデカさよ...と思っていたけれど、光彬は光彬で純皓にベタ惚れ of ベタ惚れ。巻が進むごとに純皓の手練手管にどっぷりハマって濃厚な肉体の交わりに積極的になってるしw とにかくこの二人の相思相愛いちゃラブっぷりは突き抜けて甘いシリーズものです。

小説としてもしっかりとした筋立てで、時代劇のお約束を踏んだ勧善懲悪の締めになっているところもこの物語にあっています。時代小説というとちょっと腰の引ける部分もあるかもしれませんが、この「華は褥に咲き狂う」は時代特有の考察的背景や役職等をほどほどの説明でまとめているので、くどくどしておらず読みやすく、物語の面白さが前面に出ていると思います。

次の6巻は5巻の伏線の純皓の異母兄・麗皓と、謎の人物(神?)玉兎の話になるのかな?どういう事案と絡めた物語になるのか、楽しみですね〜。


最後に個人的希望をちょこっと。

  • 「紅鞘」の陽炎さんが上様の配下になったのにあまり登場しないのが残念だから、この先の物語で活躍してくれたら嬉しい。愛妻家・祐正との関係もちょっと気になるw
  • 今後もこの華は褥に咲き狂うシリーズは是非とも小山田あみさんのイラストでお願いします...もうこのシリーズはイメージが小山田あみさんの絵で固定されていて他は受け入れられそうにないw



それにしても5巻に至ってもまだ咲と門脇のことを”仲睦まじい夫婦”と思ってる光彬w...門脇さん不憫なりw

では、また!
浅葱 拝