きょう、このBL本、読んだ。

商業BL本(漫画・小説)の感想。ネタバレあり。某文芸編集部編集者/小説編集者歴7年目(+校正者歴3年)。

12月に購入したBL漫画(全7冊)

あけましておめでとうございます🎍
新年ですが平常運転のブログ記事ばかりの更新となっております。
本年もよろしくお願いいたします。


2019年12月に購入したBL漫画は7冊でした。
手当たり次第に購入しても読む時間が全然取れなくて、積んでる漫画・小説があふれてるのでだいぶ反省した結果ですw
管理アプリつけるようになって、未読本ばっかりガン積みなのを目の当たりにすると反省しますね...可視化コワイ(ノД`)

漫画は確実に読みたいと思っているものと、気になるなぁ〜というものは購入して、
気になるけど買うか迷うなぁ...と悩むものは購入しない事にしました。


というわけで、いつものように購入記録+ちょこっと感想付きになっています。
ではどうぞ〜❗️
(順不同/敬称略/あらすじは電子書籍サイトの作品内容から)
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恋するヒプノティックセラピー / まさき茉生

[あらすじ]「催眠セラピーで気持ちも身体もダダ漏れ」ボーイズバー勤務で恋人いない歴=年齢のクローゼットゲイ・高澄一志は、耐性がないせいですぐに周りの男性を恋愛対象として見てしまう自身の惚れっぽさに悩んでいた。そんな一志は最近隣に住む年下の大学生・伊佐木蒼と仲良くなった。酔って倒れているところを介抱したことがきっかけで、お礼にご飯を作ってくれるようになり、一志は早くもイケメンな蒼にドキドキしてしまう。ある日、一志の悩みを知った蒼はバイト先の催眠アロマオイルマッサージ店に誘い、耐性をつけるための特訓として蒼の施術を受けることを提案し――。

[感想]がっつりエロな漫画でした〜。ストーリー自体には特にこれといった特徴はないw 可愛い系の顔をしている受けの身体がむっちりした筋肉のエロい身体付きで、ちょっとアンバランスに感じたけれど、そこも含めて、ちょろい・エロい・純情の三拍子っぷりがなんか可愛かった。エロ特化の漫画は流し読みして終了って感じが多いんだけど、まさき茉生さんの漫画は好き。

神様のウロコ(1)  / 日ノ原巡

[あらすじ]智治はなかなか新作を書けないでいる小説家。久しぶりに祖母と暮らした故郷に帰ってきたら、寂れた駅前で、お腹をすかせ倒れ込んでいる男を見つけてしまう。今時和服すがたの男に、何をしているのかと尋ねると、「妻を待っている」と言うが、なんとその「妻」とはーーー!!? 新鋭・日ノ原 巡が描く、龍神×男嫁の異種恋愛譚、ここに開幕!!

[感想]1巻はまだ物語の序章という感じで、これから智治がどんな風に龍神の鱗さんに恋心を持つのか楽しみ。恋愛要素以外の部分では、智治が抱えている負の過去っぽいエピソードとおばあちゃんとの関係も気になるし、天狐の登場で天界(神様の世界?)の事情っぽいものも気になる。日ノ原巡さんの漫画は、攻め受け片方のキャラは好きだけどもう片方はまぁまぁって感じで、個人的にツボに入らないことが多いんだけど、この作品は智治も鱗さんも好きなキャラクターだった。特に鱗さんがほんわか可愛らしくて好き。少し絵の感じが変わったかな??

君はパーフェクト / 未散ソノオ

[あらすじ]いわゆるデキる男・木関創也は、極度の世話焼き体質。同期のものぐさ王子・野間ゆずは、創也にとって好きなだけ世話ができる貴重な存在。お世話する方もされる方も「幸せ」なのに、思わぬ横槍が入って…!?人をダメにする世話焼き男×ものぐさ王子クンの究極のわれ鍋とじ蓋ラブ!電子版特典として、紙書籍の応援書店特典マンガ2Pを収録。

[感想]う〜ん、何というか感想を持ちづらい漫画だった...。面白い・面白くないで言えば面白くないわけではないんだけど、具体的に何がいいとかここが好きとかいうのが出てこない感じ。ストーリーにもキャラクターにも置いてきぼりにされて、放置される感じでもどかしさを感じた。未散ソノオさんの漫画の魅力ってなんだろうなぁ。合わない作家さんだなってキッパリ切り捨てて新作チェックしないでもいいやって感じにはならないから、何かしら魅力を感じていることは確かなんだけど、具体的に語れない...そしていつもなんだか気になって買ってしまう。そんな感じです。

ボクの旦那様(2) / 直野儚羅

[あらすじ]猫の獣人・ユニは、つがいである精悍な犬の獣人の侯爵様に愛され、元気な双子の赤子を無事出産。家族で海水浴に行ったり、旦那様と愛を確かめ合ったり、充実した日々はあっという間に過ぎていく。初めての子育てはてんやわんやだけど愛いっぱい。犬×猫もふもふファミリーLOVE

[感想]ユニが子供っぽいのでちゃんと子育てできるのかなぁと思っていたけれど、双子ちゃんはスクスク育ってたw 獣体に近いピアージュの方が女の子で自由奔放&結構やんちゃなのがおもしろおかしかった。ほんわか子育てライフに差し込まれるシリアスなストーリー部分は、直野儚羅さんお得意のダーク・ファンタジーなんだけど、バイオレンス要素は薄くて割とあっさりしてるので、ちょっと物足りないような...。黒い卵から何が生まれるのかは次巻に持ち越しなのね...予想外の何かが生まれるのかな。楽しみ。2巻で登場したライオン王子の護衛兼侍従のイケメン渋オジと黒狐にもまた出てきて欲しい。

コミックパーティ ワンダーラブ(2) / 山野でこ

[あらすじ]男だけどBL漫画家をしている雷蔵はひょんなことから同じく男でBL作家をしているTOSと知り合う。リア充でイケメンだけど作風は闇BLで超売れっ子の雷蔵に対し、作風はふわあまBLだけどコミュ障陰キャで人気もイマイチなTOS。なにもかも正反対な二人だったが、いつしか真剣に想い合うようになり恋人同士となる。しかし最近、TOSの部屋に不審な手紙が届くようになり、心配した雷蔵は「一緒に住もう」と誘ったが…!?

[感想]相変わらずTOS先生おもしろいw 1巻の陰キャ拗らせ具合は多少影を潜めたけれど、独特な勘違いっぷりは健在で、本当にいいキャラしてる。そして雷蔵先生もだいぶ振り切った感じでTOS先生との関係を深めてて、ナイスコンビでナイスカップルw 新キャラ登場で意外にもTOS先生が人に好かれる質だと分かったり、中田さんが妻子持ちだったり、新しい要素を入れつつも1巻からの面白さが継続されてて大満足。雷蔵先生が自分達のことを実録(風)漫画でSNSに上げて、TOS先生が雷蔵先生との初Hを振り返る流れ好きだなw

はだける怪物 下 / おげれつたなか

[あらすじ]セフレだった秀那と林田は、恋人同士になり、今は大阪と東京での遠距離恋愛中。秀那は大阪で、偶然林田の元カレ・弓と出会う。弓は、かつて林田が暴力を振るっていた相手で、今も林田の部屋の壁に貼られた写真のひとだった。そしてある時、秀那は弓の体に未だ残る、林田の暴力の痕を見てしまい……。『怪物』だった林田と、彼を好きになってしまった秀那。「好き」だけで終われない、いびつなふたりの物語、いよいよ完結。

[感想] 📌こちらに感想記事あります。
blnote.hatenablog.jp

薔薇とヘドロ extra edition / 天河藍

[あらすじ]互いが居ないと生きられないと悟った理人と大我は、気持ちを確かめるように身体を繋げ合っていた。
ある日、理人が昔の仲間・柳川に呼び出される。それについて行った大我は、柳川からの問いに動揺を隠せず……。求め合う共依存BLの後日譚――!※「薔薇とヘドロ extra edition」は、著者の同人誌「薔薇とヘドロ 番外編1.5」及び「薔薇とヘドロ extra edition」を加筆修正したものです。

[感想]2人だけの箱庭で2人だけの幸せに充足している共依存の2人。想像通り。柳川にわざわざ「みこにとって家族なんて反吐が出る存在だよな」って心の声で語らせる必要あるかな?語らせることで却って陳腐になることもあるので...難しいです。



では、また!
浅葱 拝

はだける怪物 下 / おげれつたなか

[あらすじ]セフレだった秀那と林田は、恋人同士になり、今は大阪と東京での遠距離恋愛中。秀那は大阪で、偶然林田の元カレ・弓と出会う。弓は、かつて林田が暴力を振るっていた相手で、今も林田の部屋の壁に貼られた写真のひとだった。そしてある時、秀那は弓の体に未だ残る、林田の暴力の痕を見てしまい……。『怪物』だった林田と、彼を好きになってしまった秀那。「好き」だけで終われない、いびつなふたりの物語、いよいよ完結。
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[感想]
がっかりすぎる。
正直なんのカタルシスもなく、エロだけ充実してた。この下巻で私の中で「はだける怪物」という作品がただエロ漫画だったという着地点に降りてしまってがっかり。

上巻で『はだける怪物』前日譚「薊」を収録した特装版を読んでいると、林田の中にある弓との思い出というのは、それまでの自分の世界がすべてが破壊され、無数の棘となって自身を蝕み腐食してしまった自己世界でもあるのに、今回の完結において、「弓に暴力を振るっていた」という事実にだけある種の気持ちの整理がついたって、それは林田の表面を均しただけのことじゃないの?
林田自身が破壊された自分の過去をどういう気持ちで振り返って受け入れたのか、何も描かれてなくて、何もわからなかった。
まさか秀那が「好きだから支えたいんだ」って言ったあの公園のシーンで、あの悲惨な過去のすべてを受け入れられたの?
それとも林田にとっては弓に暴力を振るっていたという事実だけが自分の負い目であり、戒めだったの?だとしたら前日譚「薊」を入れた特装版を出す必要なかったんじゃないの?

下巻の秀那の存在は、弓と林田のただの連絡係で、物語の狂言回しで、あとはエロを貪ってただけ。
秀那が林田に「どれだけ俺を振り回せば気が済むんだ」って言ってたけど、自分から弓に接触して行って、林田と弓のことでわたわた混乱して、頭の中で空回りして態度に出してただけだよね。むしろそんな不自然な態度の秀那に林田が困惑してたのに...何言ってんだ感。
上巻の時も思っていたけれど、秀那って自分本位の馬鹿だよね。

正直、エロに特化していて奇天烈キャラでギャグに寄ってる「ヤリチン☆ビッチ部」の方が、まだそれぞれのキャラにもエピにもカタルシスがあるわ。って思うぐらい、この下巻には何もなかった。
下巻で唯一、印象に残るのが過去の弓と林田のシーンで、現在も弓の出ているシーンだけしか心に残らないって、なんのための下巻だったんだろう。

追記:
林田が笑えるようになったと知って、弓が気持ちを整理できたのは良かったけどね。
でも、この「はだける怪物」は弓の物語じゃないし、弓は自分が暴力を受けていた時期に、林田がどんなに境遇にいたのか知らないからね。
だから弓と林田は離れなければならなくなった訳だし。
だからこそ、弓と同じく林田の過去を知らない秀那(との出会い)が、林田にあの過去を乗り越えさせたんだとしたらすごいカタルシスだったんじゃないの。


では、また!
浅葱 拝

獣使いは守護獣と愛を誓う / 月東湊(イラスト:榊空也)

[あらすじ]生まれてすぐに親に捨てられた琉央は雑技団に拾われ獣使いとなった。珍獣好きな王妃に招かれ宮中に上がった琉央は、末の皇子が飼っている美しく雄々しい獣の世話を任される。名前のなかった獣に綺羅と名づけ可愛がり、年下の皇子とも少しずつ心を通わせてゆく琉央だが、綺羅がこの国の守護獣であり、その悲しい運命と皇子との関係を知ってしまい?電子限定書き下ろしSSを収録!!(電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]

獣使いと皇子...皇子の獣

獣使いの琉央が皇子の獣である”綺羅”をお世話しながら、綺羅を通して皇子と心を通わせていく様子が描かれている序盤は、獣人モノのセオリーを踏襲しているので、綺羅と皇子が入れ替わりで登場することとか、綺羅に皇子のことを語る琉央とか、琉央の前でくつろぐ綺羅とか...お約束的展開を楽しめる。
中でも、獣といることが好きだという琉央が綺羅について語る言葉に泣き出した皇子のシーンは、それまでの気難しい皇族のイメージしかなかった年下皇子の幼い弱さが素直に流れ落ちたシーンで、とても好き。
この時どうして皇子が”自分の獣”のことを嫌いだと言ったのか...というのが少し後になってわかるのだけれど...それがつらい現実で...。

守護獣という運命

獣の綺羅が実は皇子で...というのは当然わかっていた事だけど、皇子にとっても琉央にとっても”綺羅”の正体がわかるエピは、残酷でショックな出来事になっていて、いわゆる獣姦レイプ...。琉央は命を落しかねなかったけれど、獣性に支配された皇子の苦しみに寄り添って側にいる事を選択するというのが、それまでの琉央らしさそのものという感じで、優しすぎるとかいい人すぎるとかいう過剰な印象を与えないのがいい。
琉央の自然な行動が結果的に「獣と生きる」という予言に添う辺りを丁寧に描かれていて良いです。

国を守る”守護獣”というのが象徴的な意味ではなく、戦場に赴き前線で闘う存在で、皇子が守護獣になって初陣したのが10歳の時というのが...キツい。胸が痛むわ...。
物語の後半は、そんな守護獣に課せられた過酷な責任を背負っている皇子の運命に焦点を当てていて、生きることを諦めていた皇子が、琉央と共にいることで今まで知ることのできなかった王や王妃の真意を知り、本当の意味で守護獣をその身に受け入れる様子が描かれていて、かなりボリュームを感じさせる内容になっています。


常に王妃が味方になって事態を好転させるのはワンパターンだなと思ったけれど、このボリュームの内容を散漫にせずに、上手くまとめ上げていると感じました。
また、傍から見ると、捨て子で獣以下の価値しかない最下層の”獣使い”をしている琉央は不憫な存在のように思えるけれど、琉央自身が自分の境遇を嘆くわけでも哀れむわけでもなく、獣と過ごすことに安らぎを感じていて、”獣使い”であることを何の含みもなく受け入れているので、その気負いのない自然さがこの物語を支えていて、皇子の境遇等の過酷さを孕んだ内容を含んでいても、小説全体は柔らかい印象だったかな。

東湊さんの小説は数冊しか読んだことがなくて、あまり馴染みのない作家さんだったけれど、ちょっと過去作を掘り出しにいきたいと思わされる魅力がありました。


では、また!
浅葱 拝

竜は将軍に愛でられる / 名倉和希(イラスト:黒田屑)

[あらすじ]竜人族の王の末子に生まれながら、二十年を経ても大人になれない厄介者のアゼルは「『25』に関する人間と会えば成体になれる」と告げられる。一族の村を出たアゼルが空から見下ろす街道を、二十五番目に通り過ぎたのはサルゼード王国の将軍ランドールだった。危地へと向かう彼に離れがたさを覚え、アゼルはそばにいたいと願う。そして戦乱で傷ついたランドールと“血の絆”を結んだ時、遂にアゼルに変化が訪れ……!?(電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]

可愛い竜の愛情一直線

一族の中で異質な存在として生まれ疎まれて、放置のような形で成長してきたアゼルの未成熟さが可愛い。
もちろん姿形も可愛いんだけど、それを別にしても、最初の出会いからランドールに興味津々で、離れ難くなって隠れながら後をつけるところ(もちろんランドールには気づかれてるw)とか、あっという間にランドールに懐いてしまうところとか...人間は恐ろしいと教えられてきたのに、人間に対する警戒心が薄くて無垢というか無邪気というか...疑う心を持たない幼さが本当に可愛い。

砦で言いつけを破って柵の外に出て行くお約束の危機的展開を引き起こすのもその未成熟さ故だけれど、その行動がアゼルを幼体から成体へ変身させて、ランドールと血の絆を結ぶ結果に結びつくという...キャラクターとストーリーの運びがとても自然。
でも何度も同じ轍を踏むアゼル.....一生懸命で可愛いけれど迂闊すぎるw

溺愛の両想い

最初から最後までランドールのことが大好きで、ひと時も離れたくないという思いがダダ漏れなアゼルと、幼体の竜のアゼルを見て「小さくて可愛い生き物好き」の性癖が疼いてかーらーの、成体になったアゼルの色香にデレデレになりながら大事にしつつ、蕩けるような触れ合いでアゼルを愛するランドール...お互いに向ける愛情の甘々っぷりがこれでもかっていう程すごいw

アゼルの家族の問題や占い婆への思い、竜人族のこと、寿命のこと、嫉妬心など、解決しなければならない障害が幾つも二人の間に立ち上るけれど、割とあっさり解決するのでハラハラ感は少ない。でも、溺愛と甘々濃度はMAXに詰まっています✨



見つめ合う姿に愛情が溢れている表紙も、幼体の竜の姿をしたアゼルがランドールの右肩に乗っているバックショットの扉絵も、まんま小説の二人!という感じで小説の世界を盛り上げてます。
個人的にはランドール将軍の「小さくて可愛い生き物好き」の部分をもう少し堪能したかったかなw


名倉和希さんの小説を読んだの実は久しぶりなんだけど、文章の明快さと安定感がブレないのですごく読みやすかったです。
名倉さんのファンタジー好きだなぁ✨


では、また!
浅葱 拝

甘くて切ない / 月村奎(イラスト:yoco)

[あらすじ]ショッピングモールにあるメガネ店で働く律は、幼い頃から不仲な両親を見て育ったため、他人と距離をおき、ひとりで過ごすことに慣れていた。そんなある日、ふとしたきっかけで人気作家の西 倫太朗と知り合い、高校生の弟とふたりで暮らしている倫太朗の家に、料理を教えに行くようになる。人と親しくすることを恐れ、誰かに恋することも、触れられることもなく生きてきた律だけれど、倫太朗といるうちに、やさしさや幸せを知るようになり!?(電子書籍サイトの作品内容より)
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[感想]

せつない

母親から育児放棄され、言葉の暴力で精神的に虐待され続け、就職で家を出たあとも、事あるごとに金の無心と酷い言葉を投げつけられる律を見ているのが本当につらい。
母親の言葉に逆えず、精神的虐待を受け入れ続けてきたせいで、自分自身の存在価値を見出せず、顧客から小さな感謝をもらうことに幸せを感じる心の有り様がせつなくてじくじく痛む。
母親の横暴を受け入れることしかできない現実に押しつぶされそうになりながらも、1人でため息をつく事でなんとかやり過ごし、お弁当を手作りして、やりがいを感じている仕事と好きな作家の本を楽しみに過ごす日々...そんな律のささやかな幸せ感が、意外な出逢いをもたらして...という導入部分からちょっと心が苦しくなる。

甘くてせつない

好きな作家と偶然出逢って交流が始まる...という王道すら、とてもひかえめなじんわりとした展開で、まさにタイトル通り、甘くてせつない。
律が料理を始めたきっかけはとても辛いものだけど、その料理をきっかけに倫太朗との繋がりができ、律の生活の中に倫太朗と倫太朗の弟の健児が入って来る事で、振れ幅が小さかった律の感情が段々と豊かになっていくのがすごくいい。

だからといって、倫太朗と健児、そして律という3人の関係で、いつも律が助けられることばかりなのかと言うとそうではなくて、兄弟の互いへの複雑な気持ちを律が橋渡ししたりして、誰かが誰かに一方的に優しくしたり、手助けしたり、という歪さはないんだよね。
だからこそ、歩みはゆっくりなのかもしれないけれど、律にはちょうどいいんだろうと思う。あと、健児くんの明るい振る舞いが自然なのもいいよ。

そんな風に3人で過ごす時間を得て、涙を流すこと、心を吐露すること...ひとりきりではできなかった経験をしながら自分を見つめ直す律に、相変わらず横暴にまとわりついてくる母親...。あの母親、ほんとにすべての発言が不愉快で胸糞悪い。

だけど倫太朗からの現実的な指摘や助言、優しさを受けながら自分の身を振り返り、最後には母親の痛罵に縛られていた自分に気づいて、いつも受け身だった律が自分から倫太朗へ気持ちを告白するという。
予想できる流れかもしれないけれど、その流れを丁寧に描いているので、テンプレ感は感じさせないです。

付記

個人的にこの小説でとてもいいと思ったところがあって、それは律の母親が安易に心を入れ替えて律と和解するわけではなく、最後まで変わらなかったところ。ムカつくし、本当に腹立たしいし、今後もあの調子でまとわりついて来ることを考えただけでうんざりするけれど、取ってつけたような和解をされるよりは、あの人はあのままっていう方がずっと納得できる。
自分のことしか考えられず、まともな人間関係を築くこともできず、いつまでも変われない母親と、倫太朗兄弟と知り合うことで自分自身を見つめ直して、自分を変えることができた律、という対照的な人生の構図になって終わることに意味があるのだと思う。
もし綺麗事のように涙の和解劇とかが盛り込まれていたら、なんだこのご都合主義のおためごかし...って感じで落胆して、この小説全体の評価が違ってた。



傷ついた心に響く誠実な言葉と真摯な優しさの重なりが、甘くてせつない......そして優しい小説でした。
律と倫太朗との恋愛はまさにこれから、というところで完結したので、この先にある二人の恋愛編も読みたいかな。

繊細な優しさとせつなさで紡がれたこの小説は、月村奎さんの作品の中でかなり好きです✨


では、また!
浅葱 拝

小説Chara vol.41㊗️創刊20周年

こんにちは、浅葱です。

BL小説の雑誌を購入するの久しぶり❗️
2012年までは小説b-Boy 、小説Chara、小説Dear+、小説リンクス小説Wings、を定期購読してたので......7年ぶり?(ノД≦*)

今回、久しぶりに購入しようと思ったのは
創刊20周年記念号!!特別企画2本立て!
☝︎これですね!
気になるでしょーー!
買うしかないでしょーーーー❗️

というわけでこの気になる特別企画2本はこちら✨

●[小説家直筆アンケート]総勢43名のキャラ文庫執筆陣に、緊急アンケートを実施!!
●[漫画家の激推し! キャラ文庫キャラ文庫の推し作品を、総勢11名の漫画家がガチで推薦
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[小説家直筆アンケート]総勢43名のキャラ文庫執筆陣に、緊急アンケートを実施!!

43名の作家さんが下記のアンケートに直筆で回答されています✨

Q1.ペンネームの由来は?
Q2.棺桶に入れてほしい1冊とその理由(ジャンル問わず)
Q3.最近面白かった本・映像作品など
Q4.おすすめしたいBL小説
Q5.自分の作風をひとことで言うと?

このアンケートだけですごい読み応えw
文字自体の印象もそうだけど、字の大きさ、使用しているペンの太さ、書き込み方等々、...いろいろと思いを馳せて楽しめる直筆ってやっぱりいいねぇ。
個人的にこのアンケで一番驚いたのは、樋口美沙緒さんが本名だったこと❗️❗️字面もこのままなのかな??素敵だ✨

[漫画家の激推し! キャラ文庫キャラ文庫の推し作品を、総勢11名の漫画家がガチで推薦

11名の漫画家の方がイラスト付きで推し小説を紹介されています✨
これ、私的には漫画家さんの作品イメージから結構意外な推し小説だなぁと思うものがあって面白かったです。
もっと他の漫画家さんにも聞いてみたいと思わせる企画だったので、機会があればまたぜひ開催して欲しい!

もちろん、この特別企画とは別に、いつも通りがっつり小説も掲載されています。

【掲載作品】(電子書籍サイトの商品内容から)
●表紙イラスト/大人気シリーズ最新作!! クールな新人俳優とその崇拝者の規格外純愛v
「ミステイク」 「美しい彼」シリーズ 凪良ゆう CUT◆葛西リカコ
初の個展開催を目前にした平良を、清居は応援するけれど…!?

●巻頭カラー/新作読みきりv バーテンダーと元同級生のひねくれた恋v
バーテンダーマティーニがお嫌い?」砂原糖子 CU◆ミドリノエバ
ゲイ嫌いのバーテンダーが、男を誘惑するよう頼まれて――!?

●カラー/小説初登場!! 別れた恋人と、二人で育むリスタートLOVEv
「別れた彼氏とお日柄も良く」尾上与一 CUT◆高久尚子
別れたばかりの元カレと、義理の兄弟になってしまい――!?

●街を守る男達の、命懸けのハードLOVE!! 
「赤い瞳は闇夜で歌う」久我有加 CUT/金ひかる
人喰い鳥を駆除する組織に、不思議な赤い瞳を持つ謎の男が現れて!?

●不器用な大人の、かりそめの疑似恋愛!!
「恋愛に向かない男」西江彩夏 CUT/麻々原絵里依
ワケアリな年下の部下と、期間限定の恋人同士になることに…!?

●大人気シリーズ番外編豪華5本立て!!
「花屋の挨拶」 「毎日晴天!」番外編 菅野 彰 CUT/二宮悦巳
「Happy anniversary」 「DEADLOCK」番外編 英田サキ CUT/高階 佑
「霊能力者の友情について」 「守護者がめざめる逢魔が時」番外編 神奈木智 CUT/みずかねりょう
「受験生の悩みごと」 「玉の輿ご用意しました」番外編 栗城 偲 CUT/高緒 拾
「暇人たちのアカデミー」 「FLESH&BLOOD」番外編 松岡なつき CUT/彩

●大人気キャラ文庫をコミカライズ!! 原作書き下ろし★
「興国に咲く恋の花」 「興国の花、比翼の鳥」番外編
原作:櫛野ゆい 作画:夏河シオリ

●HEART OPEN CAFE
ESSAY「20にまつわるetc.」
緒芋みお/白松/ツバダエキ/らくたしょうこ

POSTER
柳ゆと
本誌初登場!!

電子版は2020年4月30日までの期間限定配信です。

小説Charaさん、創刊20周年おめでとうございます🎉

では、また!
浅葱 拝